日本人は温暖化に伴う食料危機をわかってない 平均気温2℃上昇で食料不足は深刻化する

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それは、農産物だけではなく水産業でもいえることだ。海に囲まれた日本が魚介類を55%しか自給できていないのも大きな問題だ。さんま漁をめぐっての韓国や台湾、中国との争いも、今後はさらに激しくなるはずだ。

いずれにしても、これから迎える食料争奪戦に向かって、政府は自国での農産物生産を捨てて、海外からいかに安い農産物を仕入れるかに舵を切った。確かに、地方の農地はどこも後継者不足にあえぎ、農地が荒れて農業後継者が育っていないのが現状だ。

一方、今後の食料難によって農産物の価格が高騰すれば、それをビジネスとして参入しようとする若者がどっと増える可能性はある。ただ、その時点では法人化を許した農業法改正によって外資系企業に農地を独占されてしまっている、あるいは希望する種子が入手できない、といった最悪のシナリオもあるかもしれない。

おそらくその頃には、海外の国々も食料を喉から手が出るほど欲しがっている時代になっているはずだ。食糧や種子を輸入には頼れない時代が来る可能性があるのだ。

地球温暖化対策の特効薬はありそうもない?

さて 、地球温暖化による食料不足は、今や空想でもなければ作り話でもない。

現実問題として、今年の7月の世界平均気温は過去最高になり、過去5年間の7月の気温も1880年の観測開始以来、気温上昇の上位5位に入った。実際、20世紀100年間の平均気温に比べて、この7月の世界の平均気温は0.95℃上回った、と米海洋大気局(NOAA)がこの8月15日に発表している。

世界は今、これまで人類が経験してきたことのない「異常気象」に見舞われている。

にもかかわらず、日本で「異常気象=食料不足」を連想する人は何人いるのだろうか……。最近になって、土用の丑の日のうなぎをすべて予約制にしたところ、去年に比べて販売数は減ったが、食品ロスを減らしたため利益は上がった、というニュースがあった。

今や食料不足の時代の中で、コンビニやスーパーなど一部の企業はいまだに利益優先に重きを置いて、食品ロスを覚悟で商品を仕入れている。食品ロス自体、本気で減らそうと思えば手法自体はそう難しくはない。仕入れを需要に応じた必要最小限に絞り、売り切れたら販売中止、というふうに思い切ることができれば。

世界の食料品は無限ではない。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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