樹木希林さんが病床で9月1日を気にした理由 娘が聞いた「どうか生きてください」の真意
内田也哉子(以下・内田):私が初めて「9月1日」について聞いたのが、母が亡くなる2週間前、2018年9月1日でした。
入院中だった母が病室で窓の外を眺めながら「死なないで、ね……どうか、生きてください」と絞り出すようにつぶやいていたんです。
あまりに突然の出来事に驚きましたが、母は「今日、死ぬ子がたくさんいるのよ」って説明してくれたんです。
石井志昂(以下・石井):そこまで樹木さんが心を砕かれていたのは、なぜなのでしょうか。
内田:あそこまで打ちひしがれていたのは、やっぱり今まさに自分が「死」に向かっていたからなのかな……と。もう長くないことは、お医者様からも伝えられ、1カ月の入院期間中には何度も危篤状態になっていました。
死が現実的に迫ってきたときに、子どもたちが命を絶っていること、そして、たぶん自分の孫や子どもを持って、命の尊さみたいなものが身をもってわかったからこそ、こんなに理不尽な、もったいないことはない、と。
石井:そういうことだったんですね。
樹木希林の最期
内田:じつは、母は亡くなる直前、急に「家に帰る」と言い出したんです。私は「いやいやムリでしょ」と思ったんですが、主治医の先生からは「本当に帰りたいなら、今を逃したらもう帰れないです」と。
そこで病院にも協力をいただき、2日後には家に帰りました。そして母は、家に戻ったその12時間後に息を引き取ったんです。
石井:ええ……!!