Netflixの難病に挑む番組に見たテレビの希望 「お涙頂戴」でなく世界から知見は集められる
今月からネットフリックス(Netflix)で配信が始まったオリジナル番組『ダイアグノーシス -謎の症状を探る-』を見た。
この番組はニューヨーク・タイムズ・マガジンのコラムを基にしたリサ・サンダース医師の試みを追うドキュメンタリー。さまざまな患者の抱える不可解で難しい病状の診断をクラウドソーシング、具体的にはネットを通じた情報発信により、世界中の医療関係者やその病の経験者、家族からもたらされるさまざまな医学知識を組み合わせて1人の患者の病名を特定し、治療の可能性を探る内容だ。
サンダース医師はイェール大学医学部准教授で、作家・ジャーナリストでもある。2004年から放送された難病を扱う大人気ドラマ『ドクター・ハウス』の医療監修を務めたことでも知られている。
タイトルの“ダイアグノーシス”とは、「自動車の各種センサーが正常に作動しているかを確認するための自己診断機能のこと。「ダイアグ」と略されることが多い。ギリシア語由来の英語で、元の意味は「診断」を意味する」(Weblio辞書より)。
シーズン1の第1話「答えの追求」の前半ストーリーはこうだ。核心に触れる部分はなるべく割愛してお伝えするが、一部はネタバレになるのでご注意いただきたい。
病と闘う人の現実を克明に描く人間ドラマ
アメリカのネバタ州ラスベガスに住む23歳女性のエンジェル・パーカー(Angel Parker)さんは、14歳のときから突然、身体に激しい痛みを感じるようになった。症状が起こると筋肉が痛くなり、尿は真っ黒。歩けなくなったり動けなくなったりする。
病院で診断してもらうと関節リュウマチや多発性硬化症でもなく、どんな医師にも病名が「わかりません」と言われる。彼女は恋人のマック・ロケット(Mac Lockett)さんと同棲しながら、長年にわたってこの原因不明の症状に立ち向かっている。
このことを知ったサンダース医師が、ニューヨーク・タイムズから力を借りて、記事や動画などを使ってネットで情報発信を開始。世界中から情報を募って力を合わせて病気を特定しようとする。次々と世界中から情報が寄せられるが、治療費の問題なども浮上。病と闘う人の現実を克明に描いている。
光を当てているのは当事者だけではない。家族をもクローズアップし、絶望の淵で自暴自棄になっている両親も描かれている。父親は「どうせ」「わが子だけ」と怒りをあらわにしている。実は母親も足に同じような症状を持つ。夫は妻の遺伝のせいだと責めたてる。見ていてつらいシーンだ。
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