プロジェクトは「最終報告」の目次から考える 不確実性が高い状況にこそ相応しい仮説思考

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現在は、「VUCA(Volatility/Uncertainty/Complexity/Ambiguity)の時代」といわれる不確実性が高い状況だからこそ、仮説思考の必要性が高まっているのです。

製品開発では、新しいコンセプトのものを開発する場合に「プロトタイプ」(試作品)を何度も作り直しながら進めていくアプローチを取ることがあります。仮説というのはいわば「思考のプロトタイプ」といえます。

したがって、いい仮説というのはいいプロトタイプと同様で、完成度が高いというよりは、むしろ低くても全体のイメージがわかることや全体を作り上げることで「何がわからなかったか」がわかるようにすることが重要です。

1度で完成させるのではなく、なるべく早めにラフな全体像を作り上げてしまうことが仮説思考でも求められるのです。

【HOW】実践の第1歩は「完璧主義」を捨てること

仮説思考を実践するうえで大きな障害となるのが、完璧主義です。もちろん「正解がある」世界や文字どおり「100点満点」を狙いにいくような場面(決算データのミスをチェックするとか、プログラムのバグをなくすとか)では、完璧主義は圧倒的な力を発揮します。

一方、もっと「柔らかい」状態で「白紙に絵を描く」あるいはそこまで極端ではなくても「ラフなスケッチを描いてイメージを共有する」場面においては、完璧主義は障害になります。

例えば教育や研修でも「正解がある」問題を解くのが得意なのは完璧主義の人なのですが、上述したような「確率論」が支配するような「最後はやってみなければわからない」世界では、完璧主義者の求める「合格点の高さ」が「行動力の欠如」となって「まずはやってみる」という意欲を削いでしまうのです。

先述のとおり、仮説思考は完璧主義とは根本的な思想が違うとともに、仕事の進め方のプロセスが根本的に違うにもかかわらず、意外にもそれが理解されていないので、「木に竹を接ぐ」状態が現場で起こってしまうのです。

例えば「デザイン思考」の発想というのは仮説思考的な発想が馴染む「確率論」的な発想法です。早期にプロトタイプを作成して「まずラフに完成像を作って何度も修正する」というプロセスなのです。これを「決定論」的な「最初から完成度を上げる」プロセスのままで導入しようというのが「木に竹を接ぐ」状態の例です。

また、システム開発の方法論でいうと、従来主流であった「ウォーターフォール型」ではまず完全に仕様を確定させてから開発に入っていくという仕事の進め方でした。それが「アジャイル開発」というプロトタイプを何度も繰り返しながら精度を上げていくプロセスの方法論が導入されるようになりました。

それでも思考回路が従来型のままなので、「精度の高いもの」を作ろうとするあまり、なかなかプロトタイプができず、また1度できたプロトタイプを微に入り細を穿って精度を上げようとするので先に進まないというのも「木に竹を継いで」いることの例です。

仮説思考的な発想や仕事の進め方は変化が激しく不確実性が高い近年のビジネス環境でますます求められる発想なのですが、「正解病」と「完璧主義」に染まった従来のオペレーション型の発想のままで導入しようとしても決してうまくはいきません。

ここで述べたような「そもそもの発想の前提条件」を十分に理解し、共有することで仮説思考の運用効果は大きく変わっていきます。

細谷 功 ビジネスコンサルタント、著述家

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ほそや いさお / Isao Hosoya

1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェローとなる。問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。

著書に『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』、『アナロジー思考 「構造」と「関係性」を見抜く』『問題解決のジレンマ イグノランスマネジメント:無知の力』(以上、東洋経済新報社)などがある。

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