「ありがとう」と言える上司が得する科学的根拠 職場で「権威を振りかざす人」は出世できない

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② 幅広い人脈が築ける

次に、礼節ある人はそうではない人よりも、たやすく大きな人的ネットワークを築くことができる。ネットワークが大きくなればそこに有能な人が含まれている可能性も高まるだろう。ソーシャルメディアなども発達した現代では、自ら積極的、活発に動き回って大規模な人的ネットワークを築こうとする人も多い。

ただし、熱心なだけではネットワークはなかなか広がらない。それに加えて、その人に礼節がなければ周囲に人は集まってこないだろう。コンピューターのネットワークでの人間関係においても、礼節が重要な意味を持つと感じている人は多い。

そのことは私たちの実施した調査の結果からも明らかである。礼節ある人は、発想、情報、人をつなぐ役割を果たすことができる。境界を越えることも容易にできるため、そういう人はソーシャルメディアだけではなく、当然、企業などでも力を発揮する。

またネットワークの恩恵、利益を誰より多く享受するのも礼節ある人自身である。反対に、無礼な人には、ネットワークからの利益がもたらされることは少ない。ネットワークからは多くの助言、情報が得られ、キャリアアップの機会も得られるはずなのだが、無礼な人はそういうものから遠ざけられてしまう。

あるアンケート調査では、礼節ある人は無礼な人の1.2倍、就職への推薦を受けやすいという結果も得られている。

7万5000人以上を対象とした調査の結果

③ 周囲の人間から評価される

もしあなたが企業の中でリーダーの地位まで上りつめたいと願うのなら、周囲の人たちにその地位にふさわしい人だと思ってもらう必要がある。

私がサリー大学のアレクサンドラ・ゲルバシ、ロス・アンデス大学のセバスチャン・ショルチとともに実施した調査では、一般に礼節ある人(この調査では、他人の尊厳を認め、誰に対しても敬意ある礼儀正しい接し方をする、という人を「礼節ある人」と定義した)ほど「リーダーにふさわしい」とみなされやすいという結果が得られている。

あるバイオテクノロジー企業を対象とした調査では、周囲から礼節ある人とみなされている人は、無礼だとみなされている人に比べ、「リーダーにふさわしい」と評価される可能性が2倍になるという結果が得られた。

また企業内での業績も約13パーセント、礼節ある人のほうが高いというデータもある。自分が礼節ある人間であるという証拠を見せると、周囲の人に有能なリーダーと思われやすくなるということもわかっている。

7万5000人以上を対象とした国際的な調査では、優れたリーダーとみなされている人の多くが、他人から「思いやりがある」「協力的」「公平」という評価をされているとわかった。

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