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こんなに?地図と「ズレてしまった」鉄道路線 7月「長崎トンネル」は一歩間違えれば大惨事

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  • 梅原 淳 鉄道ジャーナリスト
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移動距離は六角川橋梁が11~16mm、塩田川橋梁が5~10mmで、基本的には橋梁が川に対して垂直の方向、つまり上流または下流に向かって動く。目に見える変動幅ではないものの、橋梁の移動自体が一般には考えられない出来事であるから驚いてしまう。

橋梁はなぜ動いているのであろうか。それは有明海の干満に由来している。六角川、塩田川とも有明海に注ぐ川だ。

有明海の干満差は最大で6mほどもあり、満潮時にはどちらの川にも海水がかなりの距離をさかのぼっていく。有明海の海水が川を逆流する力は大きい。おかげで河口からそう遠くない位置にある塩田川橋梁はもちろん、河口から13.5km離れた六角川橋梁にも影響は及び、橋脚を上流側へと押し出そうとする。潮が引くと橋脚も元の位置に戻されるので、1日に2回程度は橋梁が動くこととなる。「息をする橋梁」とは言い得て妙だ。

河口に架けられているために干満の影響を受ける橋梁は数多いが、六角川橋梁や塩田川橋梁のように動く例はあまりない。ではなぜ、長崎線の両橋梁が移動するかというと、架けられている場所の地盤が軟弱だからだ。

両橋梁とも架けられているのは佐賀平野で、有明粘土層と呼ばれる極めて軟弱な粘土層が地表から深さ約20mまで覆っている。橋梁だけではなく、地平に敷かれた線路も影響を受け、長崎線では列車が通るたびに盛土が2~3mm沈下するという。

最高時速120kmで通過できる

六角川橋梁は橋脚の移動の繰り返しに加え、長年の積み重ねで橋梁自体もわずかに傾いている。それでもJR九州の橋梁に異常はなく、列車も最高時速120kmで通過可能だ。

塩田川橋梁は建設時期が新しいだけに頑丈につくられ、3連のワーレントラスも橋脚部でしっかりと結合された。これが裏目に出て、桁本体や桁を支える部分にひび割れが生じたそうだ。結局、有明海の干満に抵抗するのではなく、流れに身を任せたほうがよいと判断され、固定された部材の一部は解除された。おかげでいまは大きな異常はなく、列車も最高時速120kmで通過している。

●大阪駅

いままで挙げた例は、鉄道関係者のなかでも特定の部門の人たちでないと知らない事象ばかりかもしれない。しかし、これから紹介する話は一般の利用者も気づきやすいであろう。

よく知られているように、かつて大都市では地下水を大量にくみ上げた結果、地盤沈下が発生した。鉄道も大きな影響を受け、線路や橋梁、駅舎などが沈んでいくという事態に見舞われている。なかでも大きな問題へと発展したのがJR西日本の大阪駅だ。

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【1.8mも地盤沈下した大阪駅】

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