こんなに?地図と「ズレてしまった」鉄道路線 7月「長崎トンネル」は一歩間違えれば大惨事
次いで採られたのが恒久措置だ。大阪駅はさらに1m程度は沈んでいくと予想された。駅を移転させるという案まで出されたなか、最も地盤沈下が深刻であった阪急第一跨線橋、阪急第二跨線橋から東口の旅客通路までの間に、高架橋をジャッキアップしたうえで新たに杭を250本打ち込んだ。
いま挙げた対策は沈下を防ぐためのものではなく、ほかの場所と同じように沈下させるためのものだ。したがって、ほかの場所では沈下は放置され、線路に勾配が生じたらバラストを厚めに敷く、それでも足りなければ小さな桁を置くといった方策が採られている。
関係者を悩ませた地盤沈下は、大阪市が地下水のくみ上げを規制したこともあり、昭和40年代に入って収束に向かう。大阪駅の地盤沈下は1975(昭和50)年には止まり、以降は沈下していないそうだ。
●JR東日本・東北新幹線上野駅
地盤沈下は鉄道にとってやっかいな存在ながら、地盤沈下が緩和されても問題が起きてしまう。その例はJR東日本東北新幹線の上野駅で見られる。
東北新幹線の上野駅は新幹線としては唯一の地下駅で、深さは30m、幅は最大で12m、延長は856mである。地下4階に長さ410mのプラットホームが2面設けられ、線路は4線敷設された。1985(昭和60)年3月14日の開業当時もいまでも、国内最大級の規模を持つ地下駅だ。
上野駅の地下駅の建設工事が始められたのは1978(昭和53)年3月のことである。当時の東京の都心部では地盤沈下が進み、地下水は地表から38mの位置にあったから、地下駅の建設工事に当たっては地下水に影響されずに済んだ。ところが、東京都が地下水のくみ上げを規制するようになった影響で、建設工事中の段階で地下水の水位が上昇傾向に転じる。
地下駅が地下水で浮上する
国鉄は、地下水の水位がどの程度まで上昇すると地下駅が安定性を失う、つまりは地表へと浮上してしまうのかを計算した。地表から13mの位置、つまり深さ30mの地下駅のうち、下部の17mが地下水に浸されるまでは問題はないとの結論が出た。
しかし、地下駅が開業すると地下水の水位は予想を超える上昇ぶりを示す。年間に平均50cm上昇し、1990年代に入ると年平均80cmとペースはさらに上がった。地下駅の周囲がすべて地下水に浸され、浮上してしまうのもそう遠い話ではない。
国鉄から上野駅の地下駅を引き継いだJR東日本はまずは応急措置を施す。質量合わせて約3万7000tもある鉄の塊をプラットホームのある地下4階に置き、地下水の水位が地平から11mまでとなっても安定性を失わないようにする工事を1997(平成9)年までに完成させた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら