こんなに?地図と「ズレてしまった」鉄道路線 7月「長崎トンネル」は一歩間違えれば大惨事
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下鉄道・運輸機構)は2019年7月11日の10時25分頃、九州新幹線西九州ルートの建設に際して実施した試掘ボーリングの際、JR九州長崎線現川(うつつがわ)―浦上間にある長崎トンネル(長さ6173m)を誤って突き破ってしまった。
トンネル内に現れた試掘ボーリングの機材は折から走行中の「かもめ16号」(長崎発、博多行き)の車体に接触し、同列車は急停車する。「かもめ16号」は現場に約1時間50分停車した後、現川駅まで自力で移動し、運転は打ち切られた。接触の影響で車体には大きな傷がついたなか、乗客と乗務員の計158人に負傷者が出なかったのは幸いだ。
地図から80mもずれていた
その後、7月24日になって鉄道・運輸機構は接触の原因として、工事用の図面に記されていた長崎トンネルの位置が異なっていたからだと発表した。
図面は縮尺2500分の1または5000分の1の長崎市都市計画図をもとに作成し、長崎トンネルの位置は国土地理院の地図を参考に書き入れたという。計画では試掘ボーリングは長崎トンネルから80m離れた場所で行う手はずとなっていたが、実際にはそうではなかったようだ。
誤りの根源とされた国土地理院は、同日に「国土地理院の地図における地下構造物の精度について」を発表した。トンネルのように航空写真に写らない構造物は、一般に施設の管理者から提供された資料をもとに地図に反映させたので精度が低いおそれがあるという内容で、地図というものの性質をよく考えれば理解できる。国土地理院の担当者とはいえ、列車が運転されているトンネルに立ち入って測量を行うことなど不可能だからだ。
ちなみに、長崎トンネルの建設工事は鉄道・運輸機構の前身となる日本鉄道建設公団の所管で、1966年11月に着手して1971年9月に竣工した。ならば、国土地理院の地図ではなく、自らが作成した建設時の図面を参考にすればよいと考えられる。おそらくは竣工時に長崎トンネルとともにその図面も一緒に国鉄に引き渡してしまったのであろう。
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