「日経平均は9月までに1万6000円へ」の現実味 ようやく市場は「正常化」へ向かい始めた

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株式市場の過度な楽観が剥落しつつある。株価は「正常化」に向かう過程でどこまで下落するのだろうか(写真:AP/アフロ)

アメリカの株価が先週の半ばから下振れの様相を強め、米ドル円相場を押し下げるとともに、日本株にも悪影響を与えた。そうした相場動向の背景については、多くの解説がなされているが、筆者は、相場変調の理由について一番正しい説明は、「これまでのアメリカの株式市場が過度の楽観に依存し高値にあったが、そうした危うい期待がようやく剥落しつつあり、株式市場が正常な状態に向かい始めたためだ」だと考えている。

「正常化」への動きが進みはじめた

「過度の楽観」というのは、たとえばアメリカの企業収益動向について、悪い材料は無視し、虫のよい期待に頼っていたことを指す。足元で4~6月期の決算発表がかなり進んだ。個別には、キャタピラーやボーイング、アマゾン・ドット・コムなど、決算内容(見通し含む)に対する失望から発表直後の株価が「正しく」下振れしたものもあったが、全体としては決算悪を無視して株価指数が少し前まで高値更新を続けていた。

「決算悪」と述べたのは、S&P500株価指数の採用企業について、4~6月期のEPS(1株当たり利益)前年比は、マイナス1.13%と減益だからだ(米ファクトセットによる集計値、すでに決算を発表した企業については実績値、他企業はアナリストの予想平均値)。これは1~3月期の同マイナス0.24%より悪い。

その収益悪を無視した株価上昇の「口実」としては、たとえば「確かに4~6月期の収益は悪いが、半導体市場などに底入れが期待できるため、きっと7~9月期は増益になるだろう」という危うい期待が挙げられていた。今のところ、同じベースでは、7~9月期のEPS前年比は、マイナス2.47%とさらなる悪化が予想されているにもかかわらずだ。

しかもこうした「口実」は、ほぼ3カ月前によく唱えられていた株価上昇の背景要因と、とてもよく似ている。当時は「確かに1~3月期の収益は悪いが、これはひとえに中国経済の悪化によるものであり、中国では巨額の経済対策が打ち出されるだろうから、4~6月期の企業収益は大丈夫だ」というものであった。こうした言い訳を「確かに7~9月期の収益は悪いが…」と繰り返すのは、さすがに無理だった、ということなのだろう。

年間収益を展望しても、同じベースの集計による、向こう12カ月間のEPSの前年比見通しは、毎週毎週下方修正が続いており、見通し数値が下げ止まる気配が見えない。こうしたアメリカの企業収益の実態悪と、過度の楽観に包まれた株価の乖離が、株価が下がる形での修正(正常化)に向かい始めたということなのだろう。

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