「日経平均は9月までに1万6000円へ」の現実味

ようやく市場は「正常化」へ向かい始めた

ところが、後の2つについては、その場しのぎの大統領の発言に過ぎない、ということが露呈した。まず農産物については、中国側が「確かに大統領からそうした購入の要請はあったが、中国側はそうする、と答えた覚えはない」と語っているとの報道があった。またファーウエイ社については、米商務省が、同社をエンティティリスト(禁輸リスト)から外さない、と正式に表明しており、米議会も規制緩和には強く反対している。ところが市場は、そうした悪材料にはほとんど反応しなかった。

さすがに「9月1日から3000億ドルの輸入に対して10%の追加関税を課す」とのトランプ発言を受けて、株価は大きく崩れたわけだが、最初から米中の交渉が順調に進展するはずもなかった。構造問題(知的財産権の侵害、中国政府による巨額の補助金、先端技術の移転強要)については、それを改めさせたいアメリカとそうしたくない中国の間の溝は、以前からずっと深い。

それを踏まえれば、7月30日(火)~7月31日(水)の上海での閣僚級協議がわずか合計5時間で成果なく終わったことは、自明であって何の不思議もない。また、トランプ大統領が3000億ドル分の輸入に対する追加関税を表明したことも、当然の帰結である。「トランプ砲が炸裂しなければ、こんな株安にならなかった」との怨嗟の声はあるが、米中間の溝の深さを考慮すれば、遅かれ早かれ同様のことになっただろう。

なお、いまだに「トランプ大統領は株高を望んでいるはずだから、9月1日までに、きっと追加関税は撤回されるに違いない」とお祈りしている人が多いようだ。ただ、あくまでも今のところは、ということだが、前述の7月末の次の米中閣僚級協議は、「9月にアメリカで」と予定されている。米中協議は、8月中は夏休みとなり、9月初に追加関税を発動した後で、閣僚級協議が再開される、というスケジュールのようだ。

また、トランプ大統領にとっては、早期の思い切った利下げ基調を連銀に要請したが、パウエル議長が聞く耳を持たなかった、という「形作り」ができている。株価が下がったら、その責任は連銀に転嫁できる(筆者は、連銀が悪いとは全く考えていないが)。このようにアメリカでは、理不尽な楽観論が剥落して、「アメリカの経済や企業収益が悪いから、米株安・米金利低下・米ドル安」といった、投資家にとってわかりやすい素直な相場展開に入り始めたと考える。

日本でも実態悪が進んでいる

一方、日本の経済・企業収益の実態も、悪化の一途をたどっている。消費者心理を示す消費者態度指数は、7月分まで急速な悪化傾向にあり、そのまま消費増税に突入する。鉱工業統計の在庫指数は輸出減もあって増加を続け、6月分の生産は大きく反落して2017年1月来の低水準となった。

企業決算については、日本経済新聞の集計によると、集計対象企業の45.7%が8月2日(金)までに発表を終えたが、4~6月期の実績値は経常利益が12.4%減益、純利益が9.6%減益とのことだ。2019年度通年でも企業側は減益を見込んでいる。アナリストの見通し平均値でも、やはりむこう12カ月のEPS前年比は減益予想のまま、下方修正が止まらない(東証1部についてのファクトセット集計値)。

こうした実態悪を踏まえると、9月までに日経平均が1万6000円に向かう、という見通しは、維持すべきだと考える。今週に限れば、急速な株価下落後の短期リバウンドはあろうが、日経平均株価は、2万300~2万1200円のレンジを予想する。

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