人気子供服マザウェイズ、「突如倒産」のわけ SNSで「マザウェイズ・ロス」、復活切望の声

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ここ1、2年は、しまむらが展開する子供服専門業態「バースデイ」や西松屋も、既存店売り上げのマイナスが続く苦しい状況だ。一方で、ユニクロは子供服でもデザイン性の高い商品やコラボ企画を拡充して親子での購買を促し、市場シェアを拡大。国内ユニクロの2018年度キッズ・ベビー部門売り上げは、4年前比で約7割増の670億円に伸びた。

低価格志向の強まりやユニクロの攻勢を受け、1990円を中心に商品展開していたマザウェイズは安くもなく高くもない、中途半端な価格帯と感じられたようだ。知人に勧められ、マザウェイズで娘の結婚式参列用の服を購入したという主婦は「値段は安いと感じなかった。後でユニクロを見たら似たような商品がもっと安く売られていた」と話す。

現金化できない不良在庫が膨れ上がる

もっとも、市場環境の厳しさ以上に、マザウェイズ特有のビジネスモデルの問題も大きかった。同社が強みとしていたのが、豊富なアイテム数とカラーバリエーションだ。つねに4000種以上のアイテムを取り扱っているデザインの幅広さが、マザウェイズの強みでもあった。

S・M・Lのサイズ展開が一般的な婦人・紳士服と比べ、身長約10センチ刻みでのサイズが必要な子供服の販売は在庫がかさみがちだ。それに加えて、マザウェイズのように膨大なアイテムとカラーを常時取りそろえるとなると、売れ筋から外れた商品の在庫は急速に増えていってしまう。

「現金化できない不良在庫が膨れ上がっていったことがマザウェイズの倒産の最大の要因」と、前出とは別のアパレル関係者は推察する。

倒産する直前まで出店を続けた同社だが、最近は知名度の低い商業施設や大型ショッピングセンターの中でも奥まった一角に出店するケースも目立っていた。既存店が苦戦する中で増収を求めるあまり、出店時の採算性精査が後回しとなっていた可能性も否定できない。

SNS上ではユーザーの悲鳴が広がる一方、販売員とみられる投稿者らによる突然の解雇に対する戸惑いや怒りをつづった投稿も散見された。ファッションに対する家計支出の減少が続く環境下、在庫がたまって収益悪化に苦しむ企業が珍しくないアパレル業界なだけに、マザウェイズが残した教訓は大きい。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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