交通事故は減るか?自動運転がもたらす可能性 生活圏によってクルマは欠かせない移動手段

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唯一、スウェーデンのボルボは、すべて自動車メーカーの責任だと宣言している。ただ、メーカー責任を実行するうえでも、自動車技術の発展だけでなく、社会基盤(インフラストラクチャー)として道路施設などを含めた交通環境における情報通信など、関連社会との連携は不可欠だ。

日産の「プロパイロット2.0」では、同一車線内での手放し運転が可能となる。車線変更も手を添えるだけだ(写真:日産自動車)

つまり自動運転を実現するには、自動車メーカーの努力だけではもはや達成しきれず、ほかの産業や社会基盤、そしてもちろん消費者の理解を得なければ達成できないのである。

その前段階として、一部の操作を機械にゆだねる運転支援の発展と、消費者がそれを体験する機会を増やすための普及によって、自動運転への漠然とした懸念を払拭し、同時に問題点を具体化し、問題解決の道筋をつけることが欠かせない。

高齢者による交通事故防止だけでなく、より安全で快適な交通社会を実現するためにも、運転支援機能のついたクルマの利用や体験を、促していく必要がある。

多くの人がクルマで出かける時代

自動運転の実現は、交通事故ゼロだけの効果を求めているわけではない。人が、交通事故の懸念を含めた運転操作から解放されることにより、多くの人たちが積極的にクルマで出かけることができる時代を迎えることになる。

いま問題とされている高齢者はもちろん、体に障害を持つ人たちも介護者の手を離れ、自力で、1人で、外出できる機会が増えるかもしれない。

筆者が考える究極の自動運転は、目の不自由な人が1人で外出できることだ。目の不自由な人が白杖をもって1人で歩いている光景を見た経験があるかもしれない。しかし彼ら彼女らは、はじめての場所や経路を1人で歩けているわけではない。誰かに案内されて体験した経路のみ、1人で歩いたり電車に乗ったりして移動できる場合があるというだけである。それでも、危険と隣り合わせであることはいうまでもない。

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