「ホルムズ海峡問題」に巻き込まれた日本の憂鬱 有志連合に参加するか否かという踏み絵
イギリスの難局は、日本にとっても対岸の火事ではない。
日米安全保障条約を破棄する可能性を示して波紋を広げたトランプ大統領は、ホルムズ海峡での船舶の安全確保に向けてアメリカが検討する有志連合に日本にも参加を求め、同盟国としての「踏み絵」を迫っている。中東の覇権争いの歴史に日本は深く関わらず、イランとも友好関係を保ってきた日本が有志連合に参加すれば、事態の悪化によっては自衛隊がイランと交戦する最悪の事態も想定され、イランとの関係が決定的に悪化しかねない。
岩屋毅防衛相が自衛隊派遣について、「現段階で考えていない。いわゆる有志連合に自衛隊が参画するというようなことを考えているわけではない」と述べたのは当然だろう。
ただ、外交交渉において、結論ありきで早々に自国の立場を開陳するのはいかがなものか。時は、トランプ大統領が日米同盟への不公平感に対する不満をぶちまけている局面だ。「日本が攻撃されたらアメリカは日本を守らなければならないが、アメリカが攻撃されたときに日本はわれわれを助ける必要がない」(トランプ大統領)という片務性が問題になっており、日本はホルムズ海峡の安全な航行への軍事的な貢献が期待されているのだ。
有志連合と日米同盟は分けて考えたほうがいい
有志連合と日米同盟の問題はリンクしかねない問題だが、分けて考えたほうがいいだろう。幸い、有志連合はアメリカの対イラン軍事圧力の一環としての色彩を帯びる可能性があり、各国の警戒感は根強い。同盟国のイギリスもこれを警戒して、ホルムズ海峡を航行する船舶の安全確保のための「海上保護部隊」をヨーロッパ諸国と協力して創設する意向を表明している。アメリカの有志連合に参加するのは、サウジアラビアなどの中東の同盟国などに限られそうな雲行きだ。
アメリカは日本が有志連合に参加しない場合、日米安保とリンクさせ、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の増額を求めてくる可能性がある。トランプ大統領はかねて日米同盟の不公平感に不満を持っている。2020年の大統領選再選を狙った選挙対策という意味があるとは言え、本質的な問題として腰を据えて対応する必要がある。
そもそも日米同盟は対中国やロシアをにらみ、アメリカにとっても死活的に重要なものであり、破棄できる代物ではない。ある外交通が指摘するように、「(日米安全保障条約の破棄は)トランプ大統領が言っているだけで、国務省などアメリカ政府内では本気で思っている人はいない」のが実情だ。
日本はトランプ大統領の放言に踊らされず、条約締結当時と大きく変わりつつある国際情勢や国力に合わせ、不公平感を減らす地道な取り組みが求められているといえよう。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら