「ホルムズ海峡問題」に巻き込まれた日本の憂鬱 有志連合に参加するか否かという踏み絵

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核合意を堅持してきたイランは、トランプ大統領の横暴に対してヨーロッパ諸国が核合意の救済に動くことを期待している。ヨーロッパ諸国は、世界の銀行間決済システムを運営する国際銀行間通信協会(SWIFT)を通さずにヨーロッパとイランの送金を処理する「貿易取引支援機関(INSTEX)」の運用を6月に開始したものの、アメリカの圧力で人道物資に取引を限定したため、実質的な機能を持つには至らず、イラン問題での無力さを露呈している。

イランは、核合意順守の果実である経済制裁緩和という利益を求める活動を外交面に限ってきた戦略的な忍耐を転換、軍事面を含めて国際社会を揺さぶり始め、ホルムズ海峡をめぐる攻防では優位に立った。しかし、イランがゲリラ的な戦術を多用したり、核合意で3.67%以下と規定されたウラン濃縮度の上限を7月に引き上げたりしたことは、アメリカが率先して叫ぶイラン脅威論を高めかねない。

イランは、安倍首相との会談でハメネイ師が明言したように、大量破壊兵器である核兵器の開発は宗教的な禁忌(タブー)というのが公式的な立場である。だが、ウラン濃縮度の引き上げは、核兵器の製造を容易に想起させ、アメリカやイスラエルによる武力行使の口実を与えかねない危険性がある。

弾道ミサイル開発や、中東各地のゲリラ支援というイランの脅威は、ヨーロッパ諸国も認識している。イランがホルムズ海峡での攻防を優位に進めれば進めるほど、イランを擁護してきたヨーロッパ諸国の離反を招くおそれもある。

イラン核合意が命脈を保つかどうかや、イラン包囲網がヨーロッパにも広がるかどうかのカギとなりそうなのがイギリスの対応だ。

同盟国アメリカの要請に応じてジブラルタル沖でイランのタンカーを拿捕したことは、法的根拠があいまいな中で、「ガソリンが満ちた危険な状況にマッチを投げ込むような行為」とも批判されている。イギリスは案の定、ホルムズ海峡のタンカー戦争に巻き込まれる事態となった。

イギリスは、ヨーロッパの一員としてイラン核合意の存続をアメリカに働きかける立場にあるが、この事案によってトランプ政権の荒唐無稽な対イラン強硬策に同調するか、これとは距離を置いてヨーロッパ諸国と共同歩調を取り続けるかの選択を迫られることになった。

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