人気と不安が背中合わせ「テスラ」の複雑な現状 カギを握る第2四半期決算はどうなるか

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モデル3はかつてテスラの手堅い稼ぎ頭になると期待されたが、それも今となっては不透明だ。ベースモデルの価格が3万5000ドル(約380万円)というモデル3の納品台数を第2四半期に増やすことができたとしても、36万〜40万台という年間目標を達成するのは一筋縄ではいかないだろう。

現在の販売ペースだと第3、第4四半期ともに少なくとも10万台の販売が必要とされるとみられるが、これは過去に実現したことのない水準だ。

5月16日に従業員に送ったメールでマスクは、損失を減らすための「徹底した」コスト削減の一環として、すべての支出を「どんな小さなものも」精査するように求め、懸念を示す形となった。

「部品、給料、旅費、賃料を含む全世界のすべての支出、文字どおり当社の銀行口座から支払われるすべての支出を精査しなければならない」とマスクは述べた。「それが、テスラが財政的に持続可能になる唯一の方法だ」。

「忠実な顧客ベース」は維持

こうした逆風にもかかわらず、テスラは忠実な顧客ベースを持ち、他社にはまねできないテクノロジーを提供している。ペンシルベニア州の芸能マネジメントのコンサルタント、タニア・シュリーバーは、昨年9月に黒の四輪駆動タイプのモデル3を購入した。ワイヤレスのソフトウエアアップデートによって航続距離伸ばすことができるなど、機能を追加できる点がとくに気に入っている。

「2週間おきに新しくてクールなものが登場する」とシュリーバーは言う。「そこが好きなところだ」。

そしてマスクは、テスラが逆境にあっても形勢を逆転できるという自らの信念を変えていない。4月に行った「オートノミー・デイ」というアナリストらとの会合で彼は、2020年中にテスラ車は自動運転が可能になるだろうという大胆な発表をした。さらに、「ロボタクシー」を100万台投入し、自動車販売よりも収益性の高いウーバーのような配車サービスを展開すると宣言した。

ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード、ウェイモ、ウーバーも無人タクシーの開発を目指しているが、自動運転車の普及には数年を要するというのが共通の考えだ。

「イーロンが正しければ、テスラは他社より10年先を行っていることになる」と、モーニングスターのアナリスト、デイビッド・ウィストンは言う。しかし、マスクがすべきは、それを証明することだ。「市場は今、イーロンとテスラに対してかなり懐疑的だ」とウィストンは指摘する。「多くの懸念がある」。

(執筆:Neal E. Boudette、翻訳:中丸碧)
(C)2019 The New York Times News Services 

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