人気と不安が背中合わせ「テスラ」の複雑な現状 カギを握る第2四半期決算はどうなるか
テスラは業界での勢力は維持している。発売からまだ1年ほどのモデル3は中型高級車の中で最も売れており、BMWの3シリーズやメルセデス・ベンツのCクラスなどのガソリン車を上回っている。アウディ、メルセデス、ジャガーもEV車を生産しているが、航続距離でテスラ車には及ばない。
今年に入り、テスラにとっての最大の難題は解決されたかに思われた。モデル3は初期生産でトラブルに見舞われたが、カリフォルニア州フリーモントの生産ラインで量産がスタートすると、テスラの販売店に顧客が押し寄せた。同社は2018年の第3、第4四半期ともに利益をあげ、自信をつけたマスクは「今後の全四半期で」黒字を達成するとの見通しを示した。
アメリカでの販売が伸び悩む
しかし、好調は維持できなかった。1月1日、テスラ所有者に適用される連邦税控除が7500ドル(約80万円)から3750ドル(約40万円)に引き下げられ、アメリカでの販売が伸び悩んだ。欧州と中国におけるモデル3の販売も不穏な幕開けとなった。従業員の7%を解雇するも、テスラは第1四半期に7億200万ドル(約750億円)の損失を計上。現地時間7月24日に発表予定の第2四半期も損失を計上する見通しだ。
最新のデータでも、アメリカでの販売不振が示されている。州別の自動車運転に関する情報をまとめたドミニオン・クロス・セル・リポートによれば、テスラの新車登録台数は今年はじめから増加したが、前年第4四半期の低水準から抜け出せていない。
カリフォルニア、テキサス、フロリダ、ワシントンなどテスラの全主要市場を含む23州における新車登録台数は、1月は2万3310台だったが4月は1万1707台だった。データは実際に販売されてから数週間後に集計されることが多いため、登録台数は前月の納車台数を反映する傾向がある。
マスクは5月23日に全社向けのメールで、4月1日以降の受注台数が5万台を超えたと明かし、「懸命に取り組めば」今四半期に9万台以上納車できる「可能性は十分ある」と述べた。しかし、大半のアナリストは、納車台数は7万〜8万台にとどまると予測している。
同月29日には、マスクは従業員に販売目標達成のために納車を加速させるよう呼びかけた。「すばらしい四半期にするために需要に追いつくよう、多く納車しなければならない」。