「ふるさと納税」に人々が殺到するワケ 寄附で地方名産品ゲット、もはや利回り商品?

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例えば、北海道の紋別市では、1万円以上を寄附すれば、紋別産のカニ、かまぼこなどの練り製品をはじめ、5品目の中から好きな品を選ぶことができる。また長野県飯島町では、3万円以上の寄附で、りんご「サンふじ」10キログラムなど、12品目からどれか1品を選択。さらに兵庫県洲本市では、20万円以上寄附すれば、淡路島のコメ「キヌヒカリ」30キログラム・淡路ビーフ1.2キログラム・淡路ごちそう館の詰め合わせ20点、の3品目からどれか1品、といった具合だ。

特産品には意外に豪華な品も多く、それ目当てに寄付する人も少なくない。事実、マネー誌やマネーサイトでは、ふるさと納税の特集を組む誌面も目立つ。もはや“利回りのいい商品”の扱いになったといえよう。

寄附金の多寡より、本音はふるさとのPR?

もちろん、地方自治体は、寄附で集まる金額に対して、子育てや医療・福祉、防災対策など、その使い道を公表している。総務省によると、ふるさと納税は2012年度実績(47都道府県合計)で、適用者74万人、寄附金額649億円だった(11年度実績は3.3万人、67億円)。前年度より激増したものの、40兆円近い地方税全体から見れば、わずかの比率に過ぎない。

はっきり言えば、自治体からすると、寄附金そのものの多寡よりも、おらが村の名産をアピールする格好の場、という認識の方が今は強いのが事実。たとえ小口の寄付で税務業務が煩雑になっても、ふるさと納税を推進するのは、「観光振興の一環」と割り切っているからだ。

実務面や政策面で、問題点もないわけではない。市町村に比べて都道府県への愛着感が少ないため寄付が集まりにくい、行政サービスを受ける者が税金を納めるという「受益者負担の原則」から外れる、根本的な地域間格差の解消にはならない、というものである。

寄附金控除にあてはまるのは、自治体だけでない。日本赤十字社や社会福祉法人、認定NPOなど、さまざまな対象があるが、特産品のような特典は、ふるさと納税だけだ。その意味ではわたしたち納税者にとっても、ふるさと納税は、単に「儲け」だけでなく、税収の使途や控除の仕組みなど、税のあり方を考え直す、いい機会になるかもしれない。

(詳しくは「週刊東洋経済」2月1日号『大増税がくる!!』をご覧下さい)

大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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