日立「英国新幹線」、祭りの後に待ち受ける試練 イベントは大盛況、だが次に造る車両がない?
しかし、クラス800の実物を下松市民が目にする機会はほとんどない。搬送作業が深夜に行われているためだ。「昼間の時間帯を走らせれば、子供たちに見てもらえる。下松で造った車両が世界を走っていることを子供たちに実感してほしい。ものづくりの街・下松を誇りに思ってほしい」。下松市の国井益雄市長はこう考えた。

2017年の3月5日に国井市長の思いが実現した。クラス800が昼間の時間帯に道路を走ったのだ。車両を一目見ようと、3万人もの人が沿道に詰めかけた。イベントとしては大成功。ただ、日中の道路使用に当たり関係各所との事前調整が難航を極め、「手続き的には今回がぎりぎり。またやるのは難しい」と国井市長は語っていた。
しかし、今年は下松市にとって市制80周年という節目の年。また、日立としてもIEP向け車両の生産が終盤を迎え、市民に感謝の気持ちを伝えたかった。「また、走らせたい」。関係者の思いが一つにまとまり、前回は市が主導するイベントだったが、今回は下松商工会議所も加わり官民あげての合同イベントとなった。
信号機が邪魔だったが…
解決すべき課題の1つが運行ルートだった。前回のルートは使用許可を得るのに困難を極め、今回はルートを少し変更して、前回の4kmから今回は2kmに短縮された。
ルート変更により工場から車両を搬出する場所も変更となった。今回は車両搬出用の出口ではなく、正門から搬出されることに。しかし、正門の真正面に信号機があり、これが邪魔になって、車両を出せない可能性もある。では、信号機を移動することはできるのか。
一見、実現不可能と思われた信号機の移動だったが、幸いにもそれを後押しするアイデアがあった。工場に徒歩や自転車で通う社員が増えており、正門前の横断歩道を拡張するという計画がたまたま検討されていたのだ。横断歩道を拡張すると信号機を移動することになる。こんな事情から、不可能と思われていた信号機の移動が実現した。
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