JR東日本、英国で鉄道運行「1年間の通信簿」 日本が誇る「鉄道力」はどこまで浸透したのか
EU(欧州連合)離脱問題に揺れる英国だが、ロンドンやバーミンガムのターミナル駅は通勤客、観光客、さらにクリスマスの買い物客でごった返す。構内を見渡すと、「より多くの座席、より多くの運行本数」「“運行会社オブザイヤー”に選ばれましたが、うぬぼれません」「200万ポンド(2.8億円)かけて当駅の券売機を改修しました」といった鉄道会社の広告であふれている。
こういった鉄道広告は日本でも珍しくないが、英国の鉄道システムには日本との大きな違いがある。鉄道会社間の競争が日本とは比べものにならないほど厳しいという点だ。2017年12月、JR東日本(東日本旅客鉄道)は三井物産、オランダ国鉄系の鉄道会社アベリオと共同で英国の鉄道運行事業に参入、競争に自ら身を投じた。
JR東日本はインドネシア・ジャカルタやタイ・バンコクで車両メンテナンスや乗務員教育に関する技術支援を行ってきたが、今回のように現地に人材を投入する形での運行事業への本格参入事例は初めてだ。
1つの路線で複数の鉄道会社が運行
日本同様、国鉄を分割民営化した英国では、かつて国鉄が運営していた路線の線路や架線などのインフラ管理を「ネットワークレール」という国営会社が一手に引き受けている。旅客列車の運行はエリア別に分割され、入札によって選ばれた運行会社が運行権を獲得する。需要の少ない路線には政府が補助金を出すので、閑散路線にもうま味はある。
入札制にすることで、各社の提案を競わせ、補助金の削減や旅客輸送サービスの改善が図られるという利点がある。需要の多い区間は5~6社が乗り入れることもある。
運行会社は英国、フランスなど欧州の交通事業者の出資により設立されていることが多い。音楽や航空で知られるヴァージングループや香港の鉄道会社・香港鉄路(MTR)も運行会社に出資する主要プレーヤーに名を連ねる。
運行権は期限付きであり、期限が到来すれば改めて入札で運行会社を募る。期限が切れた後は別の鉄道会社にすげ替えられるかもしれないため、緊張感を持った経営が必要となる。
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