日立の世界戦略「英国新幹線1396両」の勝算 5月の業界再編で米国に新ライバルも出現
「この列車は英国で走る“新幹線”だよ」――。一生懸命説明する父親と、日本では見掛けないデザインの車両を前に目を輝かせる子供。日立製作所の国内における鉄道車両製造拠点である笠戸事業所(山口県下松市)が5月19日に一般開放され、家族連れを中心に約6000人の市民でにぎわった。
近年、笠戸事業所では海外向け車両の生産が急拡大。「4年前と比べ生産量が2倍になったが、その半分以上が海外向けだ」と、笠戸事業所の川畑淳一所長は胸を張る。鉄道車両は日立だけで造るものではない、数十社にも及ぶ地元の協力工場との共同作業だ。下松市は部品メーカーが集積する鉄道城下町でもある。日立の海外事業が拡大することで地元経済が潤う。
職人技では日本に一日の長
笠戸事業所の公開は4年ぶり。地元経済の活性化に一役買っている英国向け車両を市民にぜひ見てもらおうと企画された。この日、英国向け高速鉄道車両として展示されたのは都市間高速鉄道計画(IEP)向けの「クラス800」と「クラス801」、および、トランスペナイン・エクスプレス(TPE)向けの「クラス802」。いずれも最初の数編成を笠戸で製造し、その後は英国内での本格生産に移行する。
英国・北東イングランドのダーラム州に新設された日立の工場は「ジャストインタイム」生産方式を取り入れるなど、随所に日本流の効率的な仕組みが採用されている。技術面でも笠戸と英国でスタッフを派遣し合うなどして、英国スタッフの技術習得を進めている。
とはいっても、職人技が物を言う作業は日本に一日の長がある。「パネルやモジュールを車体にわずかなすき間もなくぴったりとはめ込む。こういうこだわりは日本ならでは」(川畑所長)。実際、英国で生産する車両についても基幹部分は引き続き笠戸で製造される。笠戸の重要性は今後も変わらない。
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