日立の世界戦略「英国新幹線1396両」の勝算 5月の業界再編で米国に新ライバルも出現
日立が英国から受注した高速鉄道車両の総数は現時点で1396両。この数字は、JR東日本(東日本旅客鉄道)が保有する新幹線の車両数1385両をも上回る。大手鉄道車両メーカー各社が分担して製造してきた新幹線車両を超える本数を日立1社で製造すると言ったら、スケールの大きさが伝わるだろうか。
英国鉄道事業は日立が自力で積み上げてきたビッグビジネスだが、2015年にイタリアの車両メーカー・アンサルドブレダと信号メーカー・アンサルドSTSの2社を買収したことで、海外ビジネスの比重が一気に拡大した。2018年3月期の鉄道事業売上高は5627億円。その8割が海外からもたらされた。
世界の至る所で日立グループが手掛けた鉄道車両が走っている。6月にシンガポールで開かれた米朝首脳会談。会場となったセントーサ島とシンガポール島と結ぶモノレールも日立製だ。セントーサ島で実況中継するテレビキャスターの後ろでモノレールが疾走する姿が世界中に報道された。
川重と日車は海外事業で巨額損失
2020年開業を目指すハワイ初の高架鉄道「ホノルル・レール・トランジット(HRT)」では車両製造だけでなく運行業務にも参画する。また、欧州の鉄道メーカー大手、ボンバルディア(本社カナダ、鉄道事業の拠点はドイツ)と組んだロンドンの大型地下鉄案件では独シーメンスに6月末に競り負けたが、すかさず、7月4日に英国の新高速鉄道「HS2」計画にボンバルディアと共同で入札すると発表した。
日本の鉄道事業者向けの車両製造では、日立と川崎重工業の「2強」を中心とした日本車輌製造、近畿車輛、総合車両製作所の大手5社体制が長年続いている。しかし、海外展開という点において、日立と残り4社では大きく差が開いている。
川重の2018年3月期の鉄道事業売上高は1417億円。売り上げを前期よりも伸ばした反面、営業損益は赤字に転落した。2013年に獲得した米ニューヨーク州交通局向け車両案件で130億円の損失を引き当てたためだ。追加発注を含めると18億ドル(約2000億円)という大型契約で、川重は追加発注を見込んで資材費などの費用を計算していたが、実際には追加発注が想定よりも大幅に減少し、期待どおりのスケールメリットが得られなかった。また、客先の設計変更要求に対応したため工程が遅れ、これもコスト増の要因となった。
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