日立の世界戦略「英国新幹線1396両」の勝算 5月の業界再編で米国に新ライバルも出現

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仏アルストム製の高速列車TGV(手前)と独シーメンス製の高速列車ICE(奧)(記者撮影)

日立を取り巻く環境は2017年の衝撃的なニュースで一変する。シーメンスとアルストムが鉄道事業を統合すると発表したのだ(「鉄道メーカー世界2位と3位が統合する事情」)。2社は中国や日立の動きを見て、生き残りのためには規模のメリットが重要との判断に至った。売り上げ2兆円規模の巨大企業の誕生を認めるかどうか、欧州委員会が目下審査中だ。

日立の鉄道事業部門を率いるアリステア・ドーマー執行役専務は、「シーメンスとアルストムの統合で競争相手が1社減る」と話しつつも、「IoT(モノのインターネット)やデジタル技術を活用して日立の競争力を高めないといけない」と警戒感を強める。

GEの鉄道子会社も合併で巨大化

さらに追い打ちをかけるニュースが5月に飛び込んできた。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は業績立て直しに向けたリストラの一環で事業売却を進めており、鉄道部門・GEトランスポーテーションの売却を決断。機関車や鉄道部品を製造する中堅メーカーの米ワブテックに吸収合併させることを発表した。合併は2019年初めに完了する見込みだ。

GEトランスポーテーションがトルコ国鉄向けに製造した機関車(記者撮影)

ワブテックによれば統合初年度の売上高は80億ドル(約9000億円)が見込まれるという。実現すれば日立を抜き去り、ビッグスリー並みの規模にのし上がる可能性が高い。GEもIoTやデジタル技術に強みがあり、日立と競合する局面も増えそうだ。

世界の鉄道産業は日立が想定する以上のスピードで動いている。2020年代に1兆円という目標はもはや十分ではないかもしれない。次のM&Aを真剣に考えないといけない時期が迫りつつある。

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