日立の世界戦略「英国新幹線1396両」の勝算 5月の業界再編で米国に新ライバルも出現
日車も米国の鉄道車両案件で設計ミスが発生、期限内に車両を納めることができず、3億ドルを超える「解決金」を支払う事態が2017年に生じた。ある鉄道メーカーの幹部は、「製品仕様の違い、従業員雇用環境の違い、さらに為替変動。海外案件は国内にはないリスクが多すぎる」とぼやく。こうしたリスクは日立も決して無縁ではないが、買収したイタリアのメーカー2社を活用してこれまでのところ巧みに舵取りをしている。
海外展開を原動力に日本の鉄道車両メーカーで頭一つ抜け出た日立は、海外でもトップメーカーへの仲間入りをもくろむ。しかし、その世界市場は激変のさなかにある。鉄道メーカー同士の合従連衡の動きが次々と起きているのだ。
中国中車の国外売り上げは3000億円を突破
きっかけは2014年末に中国大手2社の統合により、売上高3兆円規模の超巨大メーカー・中国中車が発足したことだ。統合以降の業績はぱっとせず、2017年12月期の売上高は前期比7%減の2070億元(約3兆4800億円)、税引き後利益も同4%減の107億元(約1800億円)だった。売上高も税引き後利益も2期連続の減少だ。
むしろ、世界のライバルが注視しているのは、同社の中国向け以外の売上高だ。こちらは前期比1%増の191億元(約3200億円)。まだ同社の売上高全体の1割程度にすぎないが、それでも3000億円クラスといえば、世界の鉄道メーカーの中では中堅規模に相当する。過去には海外売り上げを大きく減らした年度もあり変動要素が大きいものの、売り上げを安定的に増やす体制が整えば、大きな脅威となる。
「2020年代の早い時期に(鉄道の)売上高1兆円を目指したい」と、日立の東原敏昭社長は2016年に宣言した。1兆円を達成すると、シーメンス(80億9900万ユーロ=約1兆0600億円)、仏アルストム(79億5100万ユーロ=約1兆0400億円)、そしてボンバルディア(85億2500万米ドル=約9600億円)の「ビッグスリー」と売上高で肩を並べ、大手グループへの仲間入りを果たせる。
しかし、足元で5000億円台後半の日立にとって、自力での達成は容易ではなく、アンサルドブレダなどに続くM&A(企業の合併・買収)も「考えないといけない」(東原社長)としていた。
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