鉄道メーカー世界2位と3位が統合する事情 IoTや新技術の波に日本勢は対応できるのか

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仏アルストム製の高速列車TGV(手前)と独シーメンス製の高速列車ICE(奧)(記者撮影)

9月26日、世界の鉄道車両業界に衝撃を与えるニュースが駆け巡った。業界2位の独シーメンスの鉄道事業と3位の仏アルストム本体が統合を決めたのだ。2社は2018年末までに統合作業を終えて、新会社「シーメンス・アルストム」を発足させると発表。統合の背景には何があるのか。

「中国、日本、韓国など新たなライバルに対抗するため、そして、デジタル化の流れに対応するためだ」

アルストムのアンリ・プパール・ラファルジュCEOは統合に踏み切った理由を会見でそう説明した。名前が挙がった中国は売上高3兆5000億円強で業界断トツの中国中車を擁する。2015年に中国企業2社が統合してできたメーカーだ。売上高1兆円弱のシーメンスや9000億円強のアルストムを大きく引き離す。日本で2強とされる日立製作所と川崎重工業の鉄道事業売上高はそれぞれ5000億円弱、1400億円弱で世界トップ集団のはるか下だ。

世界の鉄道市場では、低コストを武器に中国中車が攻勢を強める。同社の売上高は国内向けがほとんどで外国向けは1割に満たない。それでも金額にして3000億円程度はあり、世界市場での存在感は小さくない。しかも中国の国内向け需要はまもなくピークを打ち、工場の稼働を維持するため外国向けに大きくシフトすると予想される。世界のライバルたちは警戒を強めており、シーメンスとアルストムの統合はこうした流れに沿うものだ。

実態はシーメンスによるアルストムの「買収」

シーメンスは新会社の株式を50%取得し、新会社設立から4年後以降に2%分の株式を追加取得する権利を持つ。取締役11人のうち6人はシーメンスが指名する。シーメンスとアルストムの両社は「対等の統合」としているが、こうして見ると、両者の力関係としてはシーメンスのほうが強いように見える。

ただ、アルストムへの配慮も見せる。新会社の本社はパリかその周辺に置かれ、仏で株式上場する。新会社のCEOには、アルストムのラファルジュCEOが就任する。会見では「将来もフランス人がCEOを担うのか」という質問も出たが、ラファルジュCEOは「国籍は関係ない」と明言を避けた。

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