医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題 法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状
岡本:産学協同は詭弁以外のなにものでもないですね。
上:患者のために診療するのが、本来の医師の姿。そして研究。研究費だって、やる気さえあれば製薬会社にたかる必要はありません。まじめに診療をやって研究費を捻出することもできるのだから。
シンポジウムの登壇者は、上・岡本両氏のほかに、ノーベル賞を受賞した本庶佑氏の元門下生で幹細胞病理学の第一人者である仲野徹氏(大阪大学医学部教授)、ワセクロ編集長の渡辺周氏やMEGRI関係者である筆者、若手の尾崎章彦氏(乳腺外科医)と山本佳奈氏(内科医)に加え、加藤晴之氏(編集者、加藤企画編集事務所代表)という顔ぶれで、「製薬マネーと医師」に関わる活発な議論が行われた。
そもそも、先の東京、毎日新聞両紙の1面トップの報道や、今回のシンポジウムの発端になったのは、ワセクロとMEGRIが総力を挙げて調査し、ネット上に構築した「マネーデータベース『製薬会社と医師』」が、2019年1月から公開されたのがきっかけだ。検索窓に医師や製薬会社の名前を入れれば、誰でも簡単に無料で製薬マネーの実態について調べることができる。
医療界の産学癒着を断ち切ることができるのか
「この問題は、どこからお金をもらっているか、どんな利害関係に立っているのか、医師がCOI(利益相反)をきちんと明らかにすべきだということじゃないでしょうか。
最近では国からの研究費はどんどん削られています。大学医局など多くの大学院生を抱えている臨床教室が研究費のために、製薬マネーに頼ることはやむをえないという側面もあるのですから」(仲野氏)
「大学病院にいる同級生に聞くと、2日に1回はお昼や晩に製薬会社からの高級弁当が配られるので、食費がずいぶん助かっているそうです。若いうちから製薬会社のお世話になるのが当たり前になっている」(山本氏)
「世界的な製薬会社ノバルティスファーマと千葉大学、京都府立医科大学や慈恵医科大学などの医師たちの研究不正に司直の手が入ったディオバン事件。その後どうなっているのか追跡調査したところ、不正論文に名を連ねた医師たちが、事件後も当然のようにたくさんの製薬マネーをもらっていた。
ノバルティスがディオバンという薬にありもしない薬効をでっちあげて、累計1兆円以上も売り上げ、一般社会に大迷惑をかけた医療界の産学癒着にいまだ何の反省もありません」(尾崎氏)
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