医師と製薬マネーのあまり表には出ない大問題

法制化も罰則もなく自主規制に頼る寒い現状

高額の製薬マネーを受け取るのは、大学教授などに出世したキー・オピニオン・リーダーやエクスターナル・エキスパートと称される影響力の大きい医師だ。

製薬会社と医師の関係性は、健全な産学協同であればいいが、歪んだ処方で医療費のムダ遣いを生み出す癒着ともなりやすく、世界中で頭を悩ませている大きな問題だ。

昨年も、ハーバード大学の有名医師が「産学の癒着関係は全面禁止すべきだ!」とニューヨーク・タイムズ紙に寄稿すると、元大手製薬会社勤務でベンチャー起業に転じた人物が「産学協同はなくてはならない!」と経済誌『フォーブス』で反対の論陣を張るなど、侃々諤々(かんかんがくがく)、さまざまな議論が行われている。

日本においても、著名医師の講演会が薬を宣伝する「闇営業」なのか、それとも、講演料を受け取った側の反論どおり「患者のためになる真の産学協同」なのか、ファクトを積み重ねて見極める必要がある。

データ調査報告の苦労話を披露する、ワセクロ編集長の渡辺氏(写真提供:ワセダクロニクル)

そのためには、数々のメディア報道の基礎となったように、「マネーデータベース『製薬会社と医師』」が果たす役割は大きいだろう。アメリカや一部のヨーロッパ諸国など、製薬マネーの公開について罰則規定のある法制化を行う国も増えてきている。

ワセクロ編集長の渡辺氏は、今回のデータ調査報道の苦労話をこう披露している。

「アメリカでは、サンシャイン法という法律ができて、公的機関がネットで公開(オープン・ペイメンツ・データ)しています。誰でも無料でそのデータをチェックできます。

一方の日本では、業界団体の自主ルールに基づき医師への支払い明細を公開しているといいながら、その実情は公開とは程遠い。なかなか全容がわからないような、形だけの公開になっているのです。そのため今回の調査では、われわれは各製薬会社の数字を丹念に集めてまわり、データベース作成に3000時間の作業と労力を費やさざるをえませんでした」

製薬マネー問題の解決への道は

法制化もされず、したがって罰則もなく、製薬業界の自主的な取り組みに任されている日本のお寒い現状。まだまだ見直しの余地が残されており、世論の後押しが大切だ。このワセクロ・MEGRI共同プロジェクトで中心的役割を果たしている若手医師の尾崎氏が、こう述べたのが筆者の印象に残った。

ワセクロ・MEGRI共同プロジェクトで中心的役割を果たしている若手医師の尾崎氏(写真提供:ワセダクロニクル)

「医師と製薬会社の利益相反の透明化が、一過性の話題で終わったのでは意味がありません。今後もこの取り組みをずっと続けて、医療や政治、つまり、この社会の何がどう変わるのかを見届けなければならないと思います」

少子高齢化と国民医療費の高騰化が進む中で、高度成長期の1961年に開始された国民皆保険制度は危機に瀕している。医療費のムダ遣いを考えるうえで、製薬マネーの問題はますます無視できなくなってくるだろう。

会場となった灘校は、日本酒の名産地として知られる灘五郷の酒造家、嘉納家と山邑家の篤志により1927(昭和2)年に創立されたという歴史がある。そのため、官に頼らない民の力を重視するという校風が今に受け継がれているようだ。

灘校の創始者たちが実現したように、民間の力で社会的に大きな影響力を持つ成果を出すことは、決して不可能ではない。公を担うのは官だけではないことを改めて認識したのが、今回のシンポジウムだった。

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