VW「ビートル」が80年の歴史に幕を下ろした理由

独特の形状や設計に込められた意味とは?

後輪の後ろにエンジンを搭載する後輪駆動は、アウトウニオン時代のレース車両のミッドシップ構想に通じる。当時、装着されるタイヤは今日では想像もつかないほど貧弱で、路面のグリップは低かった。アウトウニオン時代のレース車両ではとくにそれが顕著で、アクセルを全開にすると、タイヤの接地面であるトレッドゴムが剥がれてしまうほどであったと語られている。

今日われわれが当たり前のように使っているラジアルタイヤは、1946年にフランスのミシュランが開発し、翌年実用化した。しかしそれが本格的に普及するのは1970年代前後となる。それまで主流を占めたのは、バイアスタイヤだ。外観は同じように見えても内部構造がラジアルとバイアスでは異なり、それによってバイアスタイヤは路面へのグリップが弱かった。

グリップの弱いタイヤをより地面へ押し付け、アウトバーンのような高速道路を安定して走らせるには、リアエンジンにして後輪にエンジンの重さを掛けること、それが初代ビートルのリアエンジン構想である。この考え方は、のちのスポーツカーであるポルシェにも受け継がれている。

2~3代目は初代ビートルに似せたクルマ

このように、初代ビートルの姿や設計は、すべて当時の技術的理論と交通事情からの必然に裏付けられたものであり、単に見栄えが可愛らしいとかという情緒的な設計ではないのである。

それに対し、ニュー・ビートルからの2~3代目は、フロントエンジンで前輪駆動のゴルフを基にし、外観だけを懐かしい初代ビートルに似せたクルマである。したがって、そこに技術的根拠や、必然性はない。単なる懐かしさだ。

一方、イギリスで生まれたMINI(ミニ)は、初代ビートルと好対照に当初から前輪駆動であることを技術的な前提に、合理性を追求した小型大衆車として、オスマン帝国(現在のトルコ)生まれのアレック・イシゴニスが設計した。1959年にイギリスで発売され、それは1945年に生産をはじめたビートルから14年後のことになる。

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