VW「ビートル」が80年の歴史に幕を下ろした理由 独特の形状や設計に込められた意味とは?

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ミニにはミニの事情があり、既存の自動車部品を流用しながら廉価な小型車を生み出すことにあった。また、第2次世界大戦後からの十数年は、戦前の設計を受け継ぐクルマ(タイヤを覆うフェンダーが車体の外に出っ張った姿=ビートルのような格好)が多かったが、ミニは、戦後の新しい時代を築くクルマにしたいとの思いがあった。

その回答が、ビートルとは異なる四角い格好で、前輪駆動で、大人4人を移動させることのできる小さなクルマという姿で完成されたのであった。

またイギリスに高速道路はあっても、アウトバーンのような速度無制限で走れる環境ではない。ロンドン以外の都市は小規模で、郊外には丘陵地帯を抜ける屈曲路の細い道が連なり、そこを走るうえでミニは最適な大きさと性能を備えていた。ドイツとイギリス、それぞれの時代と、国柄にあった小型大衆車の誕生である。

したがって、2001年にドイツのBMWがニューミニを誕生させたとき、その姿はニュー・ビートルと同じように初代に似た造形となったが、そこに技術的、あるいは合理的な必然性が初代から引き継がれ、残された。

電動化がクルマの形を変える時代

今日、ミニは車種を拡大し、車体寸法もより大柄にはなった。だが、その構成要素はなお技術的、合理的必然性から逸脱してはいない。ミニが現在も人気を博し、販売を拡大しているのに対し、ビートルがいよいよ終焉を迎えた理由は、昔を懐かしむ姿でしかなかったからであろう。

しかし今後、普及が見込まれるEVは床下にバッテリーを搭載し、モーターや制御機器は車体のどの位置にも搭載できるようになる。もはや技術的、合理的な側面で造形の意味はほとんど失われ、使用や利用上の利便性、あるいは人の感性が形を求める時代になるだろう。

電動化や自動運転化が進み、人とクルマがどのような親しい関係を結んでいくかが問われた際、あらためて造形の重要さが見直されたときには、人を笑顔にするビートルのような姿が復活することはあるかもしれない。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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