BMWに「新車同然の中古車」が溢れかえる大異変 販売増の裏でディーラーの「自爆営業」が常態化

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冒頭で紹介したような中古車はいわゆる「新古車」と呼ばれ、自動車の「お得な購入方法」としてインターネットで紹介されることもある。ディーラーが販売ノルマを達成するために、自ら名義人(購入者)となって新車登録(自社登録)したナンバー取得済みの車で、扱いとしては中古車としての販売となる。新車同様の状態にもかかわらず販売価格は1~2割ほど安くなるが、高級車の場合は通常あまり表には出てこない。

ところが、なぜかBMWに関しては、新古車が目立って多い。例えば、中古車情報サイト「カーセンサーnet」で走行距離100キロメートル未満の中古車を検索すると、7月1日時点で849台がヒットする。

この数字は同じドイツの高級車、メルセデス・ベンツの99台、アウディの6台と比べて著しく多い。トヨタ自動車(4397台)やホンダ(2767台)といった国産車よりは少ないが、BMWの国内新車販売の台数は約5万台。トヨタ自動車が約150万台販売することを考えると、BMWの多さが際立っている。

疲弊する販売現場「メカニックが確保できない」

新古車を作ると、1台単位で見れば収益は悪化する。ただ、台数ノルマを達成したときにメーカーから支払われる成功報酬(リベート)があるため、多少の自社登録やむなしというのは、BMWに限らず自動車ディーラーの間では共通の考え方だ。

ただ、あまりにも多くの新古車を抱えることは、ディーラーの経営を圧迫することになる。実際、各地のBMWディーラーは、口々に経営の厳しさを訴える。

「折からの人手不足で、メカニックの確保が難しくなっている。賃上げをすべきだとは思うが、利益が上がらないので難しい」

東日本のあるディーラーの幹部はこう訴える。近年、自動ブレーキや運転支援システムの搭載など自動車の高度化が進んだことにより、不具合対応やメンテナンスでメカニックの労働時間は長くなっている。BMWディーラーは大量の新古車を抱えるために経営が厳しく、ほかのメーカーのディーラーとのメカニック獲得競争で不利な立場に立たされている。

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