アメリカの株式市場が脆さを露呈し始めた 自主性を欠く日本株もいずれは下落する

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これに対し、その前2回の利下げ開始時期(1995年7月と1998年9月)は、株価が上昇基調にあった。このときは、経済が軽い景気調整で後退には陥らず、業績悪化が懸念されにくかったからだと考えられる(結果として利下げはともに3回にとどまっている)。

「今回も連銀は利下げをするが、アメリカ経済はそれほど悪くならない。だから利下げを好感して株価は上がり続けておかしくない。これは1995年や1998年と同様だ」という向きがあるかもしれない。しかし、仮にそうした見解が正しいとすると、足元のアメリカ国債10年の利回りの低下(2.0%前後)がおかしいことになる。

10年と3カ月の国債利回りでみたイールドカーブ(10年物-3カ月物利回り差)は、1995年と1998年は逆転していないが、最近の利下げ開始時期に呼応する、2000年8月から2000年12月と、2006年7月から2007年4月は、月中平均ベースで連続してマイナスだった(長期債券相場のほうが先を読むので、連銀の利下げよりイールドカーブの逆転のほうが、時期が少し早い)。また、現在もイールドカーブはマイナスだ。

つまり「1995年や1998年と同様の経済環境だから株は上がってよい」という主張が正しければ、イールドカーブ、すなわち長期金利が間違っているわけで、それなら長期金利は跳ね上がらないといけない。長期金利が上昇する「金融相場」はありえず、つまり株価が上がるはずがない。

雇用統計と市場の動きが暗示する2つのこと

さて、冒頭の雇用統計とアメリカの株価の反応に戻ろう。雇用統計の内容や市場の動きは、2つのことを示していると考える。

1つは、短期的な先週末の株価の動きについてだ。先述のように、連銀の利下げ開始が「2001年・2007年型」であれば、景気悪化が利下げ効果を上回り、株価は下落するだろう。あるいは、「1995年・1998年型」なら、長期金利が跳ね上がって「金融相場」などは起こりえない。それが「現実」だが、足元の株式市場は「非現実的な」金融相場シナリオをもてはやして自縄自縛に陥っていた。

そのため、非農業部門雇用者数の伸びは、本来好材料であるにもかかわらず、利下げの可能性が後退したと悲観し、株価が下落したと解釈できる。要は、市場の都合のいいシナリオが、雇用統計で馬脚を現した(駄洒落的で恐縮だが私は馬渕だが……)ということだ。

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