アメリカの株式市場が脆さを露呈し始めた 自主性を欠く日本株もいずれは下落する

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「では、家計は?」とみれば、日本の消費者心理を測る消費者態度指数では、気分に大きな悪影響を与えるような事象(例えば、過去のリーマンショック、東日本大震災など)が、足元はとくに見当たらないにもかかわらず、6月まで大きく悪化している。このまま消費増税に突入する結果は明らかだろう。

アメリカでは少し前まで、消費者心理は明るかったが、陰りが表れている。コンファレンスボートの消費者信頼感指数は、昨年10月で山をつけた形が明確だ。最新の6月の同指数は下振れし、2017年9月来の低水準となっている。

アメリカの株価が楽観的過ぎる2つの要因

このように主要国の経済情勢は悪化しており、アナリストの企業収益見通しも日米で下方修正が優勢だ。それに対し、とくにアメリカの株価は上昇基調を続けた。この実態と株価の乖離をもたらしているものとしては、(1)米中首脳会談を受けての市場の期待と、(2)米連銀の利下げ期待が挙げられる。ただ、そうした期待は危うい。

まず、6月29日(土)の米中首脳会談では、7月から発動とも懸念されていた、3000億ドル程度の対中輸入に対する追加関税が、期限を定めず先送りになった。加えてトランプ大統領は、ファーウェイ社へのアメリカ企業の禁輸措置を、緩和する主旨の発言を行った。

米中通商交渉の次のメドは、11月16日~17日のチリでのAPEC首脳会合の際に、先日のG20と同様に個別設定されると考えられる、米中首脳会談となりそうだ。しかし、構造問題(知的財産権の侵害、巨額の補助金、先端技術の移転強要)で両国の隔たりが大きく、今後大きく交渉が進展するとは見込みにくい。

ファーウェイについては、アメリカ政府は公式には、同社をエンティティリスト(禁輸リスト)から外さないと明言した(汎用品の輸出は可能)。

連銀の金融政策については、ジェローム・パウエル議長が利下げの可能性を示唆したのは、景気が悪化に向かうリスクが高いと判断しているからだ。その連銀の懸念が正しいとすれば、まず株式市況は、逆業績相場(業績が悪いので、金利を下げても株価が下落する)に突入するはずだ。

実際に、近年の利下げ開始時期のうち、最近の2回(2001年1月と2007年9月)においては、株価が下落基調をたどっている。これは、ITバブルの崩壊期と、リーマンショック前の住宅バブルの崩壊期に当たり、景気の悪化が金利低下効果を押しつぶした形だ。つまり、利下げ開始は株高を意味しなかった。金融緩和が株価を押し上げ始めたのは、何度も緩和を進め、その累積的な効果がようやく景気悪化に歯止めをかけ始めた後だった。

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