凍てつく金融市場、日本にも襲いかかるマネーパニック最前線

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 2008年暮れ、日本。複数の銀行の資金担当者や幹部たちが日参したのは東京・虎ノ門のゆうちょ銀行だった。その帰り道に、郵政民営化のありがたみをしみじみと実感したに違いない。民営化で“普通”の銀行に変わったゆうちょ銀の資金のおかげで、資金繰り難からどうにか逃れることができたからだ。まさに「地獄に仏」だった。

邦銀や外銀を助けた“救世主”ゆうちょ銀

昨年9月15日のリーマンショック以後、一挙に銀行間の資金貸借市場(インターバンク市場)が混乱した。銀行間に相互不信が高まった揚げ句、経営悪化がうわさされる外銀はもとより、一部の大手邦銀ですら、インターバンク市場で円資金の調達が困難化していた。

それらの銀行が頼りにした先が、民営化に伴ってインターバンク市場の参加者になったゆうちょ銀だ。「数多くの銀行が資金拠出を求めにきた」と、その様子を幹部は話す。

ゆうちょ銀は巨額の貯金資金の一部をインターバンク市場で日々運用している。その運用資金を自行に振り向けてもらいたい--。そんな深刻な要請をむげにすることもできず、ゆうちょ銀はインターバンク市場での資金取引に応じた。これによって、一部の銀行は資金繰りを何とかすることができた。

それにしても金融市場の事態は厳しい。国際的に見て信用力が相対的に高まっているはずの大手邦銀でも、ドル資金の調達が危うくなった。日銀によるドル供給オペレーションの開始で苦況をくぐり抜けることはできたものの、一時はパニックに近かった。

ついで変調を来したのは、なんと母国通貨=円資金市場だ。メガバンクでも3カ月というような長めの資金調達に難渋する信用収縮現象の中で、日銀による市場への資金供給以外の資金パイプを半ば断たれた銀行が相次いだ。しかもこの話には後段がある。

銀行がインターバンク市場で日銀資金を調達するには、保有国債などの担保を日銀に差し入れる必要がある。ところが外銀などでは国債などの保有額は少なく、担保拠出余力は乏しい。そもそも「担保となる国債を購入するにも円資金が足りない」(外銀)。そこで、ゆうちょ銀などに無担保資金の提供を求めざるをえなくなったのだ。

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