「自動運転」で覇権を握るアメリカ企業はどこか 自動車業界だけでなく業種超えた展開本格化

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電気自動車のベンチャーとして登場したテスラ(TSLA)は、高級セダンのモデルS、クロスオーバーのモデルXに続き、普及型モデル3の量産体制がようやく整ってきた。テスラは現在、8台のカメラとレーダー、12個の超音波センサーを持つ「オートパイロット」機能を新車全車に標準装備している。現時点では運転支援機能に限定されているが、将来的にはソフトウェアの更新により完全自動運転に対応できるよう設計されている。

今年4月、イーロン・マスクCEOは、2020年にもライドシェアアプリを追加することにより、完全自動運転のロボタクシーのネットワークを実現する構想を発表している。

台風の目はアルファベット傘下のウェイモ

市場の急激な拡大が見込まれる自動運転の市場は、異業種の企業にとってもビジネスチャンスの可能性を秘めている。台風の目となっているのがグーグルの親会社アルファベット(GOOG.L)の自動運転開発子会社のウェイモ(Waymo)だ。2009年にグーグル(当時)の自動運転車開発部門としてスタートし、2016年に分社化して誕生した。

公道でのテストや住民も参加しての試験などを経て、2018年12月、世界で初めて自動運転車による配車サービス「Waymo One」をアリゾナ州フェニックスでスタートさせている。今年5月には、ライドシェア企業のリフト(LYFT)と提携、自社の自動運転車10台をリフトに提供し、リフトのサービスからも自動運転車を利用できるようになった。

アメリカ国内だけではなく、グローバル展開も進める。ルノー・日産グループと提携、フランスと日本で合弁会社を設立し無人自動運転サービスに関する開発・試験を行うことが発表された。

前回の記事(「5G導入」で注目集まるアメリカ企業の覇権争い)では、5Gの心臓部となる半導体の競争について言及したが、自動運転でも半導体は重要な位置を占める。とくにレベル3以上ではカメラやセンサーから得られる情報をデータとして処理し駆動系の操作につなげるため、ケタ違いの処理能力が必要とされる。この自動運転用の半導体で真っ先に名前があがるのがエヌビディア(NVDA)だ。

同社は画像処理装置(GPU)の開発メーカーで、高性能ゲーム向けの「GeForce」や、モバイル向けのCPUとGPUを統合したプロセッサー「Tegra」を主力としている。最近ではAIのディープラーニング(深層学習)などに対応した「Tesla」の展開も拡大している。

大量の情報処理能力が求められる自動運転向けも有望な市場で、すでにトヨタやフォルクスワーゲン、アウディ、テスラなど世界の主要自動車メーカー、センサーなどの関連機器メーカー、ソフトウェアやマッピングなど多くの企業、MITや名古屋大学といった学術・研究機関とも提携している。

対するインテル(INTC)は、2017年1月に自動運転向け開発強化のための「インテルGO」というプラットフォームを発足させ、直後の同3月には提携関係にあった自動車向けの画像処理半導体に強いイスラエルのモービルアイを買収した。インテルもBMWやフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCAU)、ワイヤーハーネスを主力とする電装品メーカーのアプティブ(APTV)など部品メーカーと提携し、開発を進めている。

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