日本経済の生産性をめぐる「誤解」を徹底解説

「賃金抑制」も「最低賃金引き上げ」も的外れだ

「生産性」という言葉をめぐる議論が増えている(写真:Rawpixel / PIXTA)
安倍晋三内閣が経済政策パッケージとして「生産性革命」を掲げてから、「生産性」という言葉がメディアにもネット上にもあふれるようになった。しかし、生産性という言葉をめぐって、議論がかみ合っていないと感じることも多いのではないか。
経済産業研究所(RIETI)副所長で『生産性 誤解と真実』の著者である森川正之氏に、生産性をめぐる問題について話を聞いた。

企業収益が増えても生産性は上がらない

――生産性という言葉がよく聞かれるようになりました。その分、言葉の誤用も多く、議論に混乱も見られます。昨年11月に刊行された著書『生産性』は時宜にかなったものでした。

内閣府や経済産業省などの政策担当者や企業経営に携わる方から、生産性について尋ねられることが多くなっていた。そうした中、生産性についての誤解が驚くほど多いことに気づいた。内外の研究成果や最新のデータを踏まえて、生産性について俯瞰するものを書こうと思った。

――代表的な誤解にはどんなものがあるのですか。

まず、生産性の概念のうち、企業の方々がよく使うのが「労働生産性」だ。これは労働者1人1時間当たりにどれだけの付加価値が生み出されたかという数字。分子にあたる付加価値は、日本経済全体の場合にはGDP(国内総生産)、企業の場合には売上高から原材料や光熱費を差し引いた数字、ざっくりいえば粗利になる。

ところが、企業では多くの人が「稼ぐ力」が生産性で、「儲かること」「企業収益が増えること」が生産性上昇だと思っている。しかし、企業収益は日本全体のGDPの2割ぐらいで、実際は雇用者報酬のほうがずっと多い。賃金を抑制して利益率を高めても、生産性が上がることにはならない。

それから、労働者1人当たりで見て、生産性が高い/低いという議論もよく聞くが、これはミスリードになる。毎月勤労統計のデータの間違いが国会で問題になったとき、「賃金が上がっていない」という場合の「賃金」は現金給与総額から物価の影響を控除したもので議論された。しかし、実質賃金が上がっているか、下がっているかは時間当たりで見るべき。同様に、生産性も時間当たりで測るべきものだ。8時間働いて2万円稼ぐ人は、12時間働いて2万円稼ぐ人よりも賃金や生産性が高い。

次ページ「サービスの質はいいのに価格が低い」は本当?
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
  • 実践!伝わる英語トレーニング
  • 非学歴エリートの熱血キャリア相談
  • 「米国会社四季報」で読み解くアメリカ優良企業
  • iPhoneの裏技
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
大物経営者でも容赦なし<br>株主総会で支持率低下続出

LIXILグループなど、株主総会における株主提案が存在感を増している。取締役選任決議を独自に調査し、否決5人を含む賛成率の低い30人と、対前年で賛成率悪化幅の大きい200人のリストを掲載。社外取締役に対する株主の視線は厳しい。