日立の新型列車、「デザインの本場」で通用する? 日本とイタリアの技術者が協力して誕生
では、ロックを製造するにあたって、とくに気をつける点はあったのだろうか。
「車両そのもので言えば、背の高い2階建て車両で、定員を増やすために制御装置などを屋根の上に配置しましたが、極力重心を下げて走行安定性を高めるため、各装置の軽量化には気を使いました。また普通の車体と比較すると、2階建て車両はどうしても車体の強度バランスが悪いので、窓の大きさなども車体強度を考慮して決定しました」
「製造面では、製品品質を向上させること、そして納期をきちんと守ること。当たり前のことですが、これらが守られないと、取引先との信頼が揺らぎます。ロックを導入するにあたって、とにかく先方の指定した期日にきちっと間に合わせる、ということだけは絶対に守らせました。もちろん、その目標は達成されましたが、アルストムは遅れましたよね(笑)」
前述のとおり、アルストムは5月31日の納期が守れず、その影響でイベントそのものが延期となってしまった。こうした細かいことは、取引先にも悪影響があり、いい印象を与えることは決してない。アンサルドブレダ時代は納期が守られないことで有名だったが、日立となって確実に変わった点だ。
イギリスから大陸へ
日立は現在、トレニタリアからロック135編成を12億6700万ユーロ(約1520億円)で受注しており、さらにオプション契約を含めると合計300編成に達する(1編成は4~5両編成で、車両数は確定していない)。
もともと、この日立「カラヴァッジョ」はイタリア国内市場向けとして設計された車両であるため、現在のメインターゲットはイタリア国内の鉄道会社だが、電源方式や信号システムなどを変更すれば、イタリア以外のヨーロッパ各鉄道へ対応させることも可能なので、ゆくゆくは他国への進出も考えているようだ。
ついに大陸側へと進出した日立の車両だが、稲荷田氏はイギリスで「ジャベリン」(395系近郊型車両)が走り始めたときほど「とくに大きな感動も感慨もない」と言う。ロックは、ヨーロッパ大陸における最初のステップではあるが、同時に「イギリスから大陸」という、次のステップへ1段階上がったわけで、感慨に浸っている暇などなく、すでにさらなる先の未来を見据えている。
列車と共に、日立という会社もまた、ヨーロッパ大陸を確かな足取りで走り始めたのだ。
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