日立の新型列車、「デザインの本場」で通用する? 日本とイタリアの技術者が協力して誕生

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ボローニャ駅で行われた車両引き渡し式。トレニタリア社長のティツィアーノ・オネスティ氏(左)、日立レールS.p.AのCEO、マウリツィオ・マンフェロット氏(左から2番目)らが壇上に並んだ(筆者撮影)

高速列車などとは異なり、比較的地味な近郊用車両ということで、少なくとも日本のメディアからの注目度は決して高いとは言えなかったが、ロックのデビューは日本人にとって大きな意味のあるものだった。

ロックは、日立としては初のヨーロッパ大陸向け車両だが、それは同時に長い鉄道の歴史の中で、日本のメーカーが設計から携わった鉄道車両が、初めてヨーロッパ大陸を走り始めたことを意味するからだ。

日立による買収から3年半

2015年11月2日、日立はイタリア重工業大手フィンメカニカから、傘下の鉄道車両メーカーのアンサルドブレダと信号メーカーのアンサルドSTSを買収、新生日立レールイタリア(当時)となって再出発した。

ロックの前面には、HITACHIのロゴが燦然と輝く(筆者撮影)

日立のヨーロッパ拠点では、それまでイギリスのニュートン・エイクリフにある、日立製作所の100%子会社である日立レールLTD.が、同社の工場で都市間優等列車や近郊列車などを中心に製造してきたが、合併や買収などと異なり、イギリスは日立が単独で進出したことから、車両の設計等はすべて日本サイドで行い、イギリスではその設計に基づいた車両を組み立てていただけという状況だった。

そんな中でのアンサルドブレダ買収であったが、同社はもともと、設計から製造まで一貫して行ってきた総合鉄道車両メーカーで、生産だけでなく開発能力も持ち合わせていた。

買収当初は、アンサルドブレダとして受注した案件の残りを生産しつつ、生産能力が不足していたイギリス向け車両の製造を請け負っていたが、その裏では日立レールLTD.の100%子会社である日立レールS.p.A(2019年4月1日に日立レールイタリアから改称)が中心となって設計・製造する新型車両の準備が進められていた。

まず開発したのは、地元イタリア向けの新型2階建て近郊型車両「カラヴァッジョ」(日立社内の製品名)で、早速イタリアの運行会社トレニタリアに採用されることが決定し、ロックという愛称名が付けられた。

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