金融庁の報告書が実はとんでもない軽挙のワケ 年金制度改革の努力を台なしにしかねない

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そうしたなか、公的年金の設計と運営に関わる人たちは、将来の給付水準の低下を限りなくおさえ、「給付の十分性」をなるべく確保していく努力を続けてきた。と同時に、政策努力により改善される将来の給付水準を織り込んだ形で将来の年金の姿を描き、できるだけその姿を国民に示そうとしてきた。

その理由は、給付水準が下がる姿だけを示していたずらに国民に不安を与えたくなかったからであったし、改革の先にある希望のある社会を示すことで、改革への協力を国民に求めたかったからでもある。

具体的には、2004年の年金改革から5年後の2009年第1回目の財政検証で将来の問題がかなり具体的に可視化されることになり、それを受けた2013年の社会保障制度改革国民会議が動くことになる。

2013年8月にまとめられた社会保障制度改革国民会議の報告書では、年金部分の最後を次の文で締めている。

少なくとも5 年に1 度実施することとされている年金制度の財政検証については、来年実施されることとなっているが、一体改革関連で行われた制度改正の影響を適切に反映することはもちろん、単に財政の現況と見通しを示すだけでなく、上記に示した課題の検討に資するような検証作業を行い、その結果を踏まえて遅滞なくその後の制度改正につなげていくべきである。

ここで、国民会議報告書が「上記に示した課題」とは、次のようなものだ。

(1)マクロ経済スライドの見直し
(2)短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
(3)高齢期の就労と年金受給の在り方
(4)高所得者の年金給付の見直し

これら『社会保障制度改革国民会議報告書』の文言を「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(通称、プログラム法)」(2013年12月5日成立)が引き継ぎ、それを受けて、2014年の財政検証でオプション試算Ⅰ~Ⅲが行われた。

2014年財政検証の本体試算は、なにもしなければこうなるという絵姿を示しており、3つのオプション試算では、この方向で年金改革を進めるといずれもが将来の給付水準の底上げにプラスに働くことが確認されている。

改革による給付改善効果は絶大

オプションⅠ、Ⅱ、Ⅲを複合した給付引き上げ効果は大きく、とくに基礎年金の給付改善効果は絶大で、第36 回日本年金学会(2016年10月28日)における小野正昭氏(現、日本年金学会代表幹事)の報告「将来に向けて検討すべき課題の整理」の中で、3つのオプション試算の複合効果が次のように示された。

経済前提ケースC 所得代替率が1.27倍(所得比例1.09倍、基礎1.46倍)
経済前提ケースE 所得代替率が1.31倍(所得比例1.09倍、基礎1.52倍)
経済前提ケースG 所得代替率が1.46倍(所得比例1.12倍、基礎1.91倍)

日本年金学会で、小野氏は「この結果を見る限り、3つのオプションは、 選択的に実施するものではなく、セットで導入することが効果的と認められる」と結論づけていた。私が昔から言っているように、この国には、3つのオプションを実行した未来しか存在しえないのである。そのことを理解していないのが、年金関係者の中にも多すぎる。

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