GAFAによる「人類の家畜化」を止めるのは誰か 人間はすでに「大切なモノ」を奪われつつある

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そういう仕組みの世界に組み込まれてしまった以上、もはや抗うのは難しいが、この行動パターンは忌むべき安直さだと自覚している。そして不安になるのだ。GAFA――グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン――自分はこれら巨大IT企業が用意した枠のなかにはめ込まれ、「必要なものだけ」を与えられている家畜みたいなものなのではないか、と。

「知りたい」を奪うグーグル、「欲しい」を奪うアマゾン

スコット・ギャロウェイ著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』によれば、アマゾンは「1兆ドルに最も近い巨人」、アップルは「ジョブズという教祖を崇める宗教」、フェイスブックは「人類の1/4をつなげた怪物」で、グーグルは「全知全能で無慈悲な神」という事態であるという。

なかでもGAFAがその破格の成功を収めた一因を分析する第7章「脳・心・性器を標的にする四騎士」では、私が自覚する「安直さ」が見事にカモにされていたことがよくわかる。

例えばグーグル検索は、毎日地球上の20億人から、35億回もの質問をされ続けているという。その規模もさることながら、人々がほぼ無意識的、反射的にグーグルに直行するという状態を作り出すことによって、もはや「調べたい」「知りたい」という人間の意思に基づく脳内の欲求すら奪い取ろうとしているように見えるのだ。

「自分では理解していないけど、ググレばわかる」「自分の記憶力や思考力は怪しいけど、検索すれば大丈夫」……こんな感覚がどこかに棲みついていないだろうか。最初は便利な道具の1つとして手に取っていたものが、使い慣れるにしたがって、まるで自分を構成する器官の一部のようになり、手放せなくなっていく。自分の脳よりも、一企業のサービスに絶対的な信頼を置いて重要視しているのだ。

しかし、そのサービスが人間に与えているのは、「依存」と「堕落」である。いや、「退化」かもしれない。グーグルは、人間から「自分の脳を使う」手順を省略させて、その脳に成り代わっているのである。

欲しいもの、食べたいもの、行きたい場所、政治思想、異性との悩みなど日々あらゆることをグーグルに向かって送信し続けていると、それに応えるべく出現するのがグーグルアドセンスやアマゾンの商品リンクだ。次から次へと「欲しいのはこれだろ?」「これが欲しいなら、こっちも欲しいはず」と突きつけて、物欲を捨てさせないよう誘惑し続ける。

スマートスピーカー「アマゾン・エコー」のCMに、ママの誕生日を祝うためにケーキ作りに奮闘する幼い息子とパパを描いたものがある。ご存じの方も多いだろう。

パパは「アレクサ、キッチンペーパー注文して」「アレクサ、ライト消して」など次々とアマゾンのAIを自分の手足として使っていく。感激しながら息子を抱きしめるママのために「アレクサ、ハッピーバースデー歌って」と命ずるシーンには「そこは自分で歌わんかい!」とママからのツッコミが欲しいところだが、どうやらこのアマゾン・エコー、クリックなしの完全自動注文へと人々を誘導する布石でもあるようだ。

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