「会話のある夫婦」が子どもの自立を促す理由 「子どものトラブル」の裏にある夫婦の問題

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裏表のない子どもに育てなければと思うあまり、「本音と建前があるのはよくない」と考える親も多いようですね。

相手に自分のことを理解してもらうためには、建前と本音をうまく使い分けることが、円滑な人間関係を構築するためには、とても大切なもの。本来、建前は、相手への気遣いだったり、ルールだったりします。

ところが、円滑な人間関係を考えるあまり建前だけで生きていると、自分の本心を出せなくなり、人と会話するのがイヤになってしまうことがあります。

ですから、家庭では、夫婦で本音を言い合い、子どもも本音をちゃんと出せる場をつくっていくことが大切です。

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本来私たちは弱い部分をだれかに受け入れてもらうことで、バランスをとっているのです。弱い部分を家で見せ合えるぶん、外に出たときに、強い自分や、あるべき役割を負えるのではないでしょうか。

ですから、家と外とで、言っていることが違っても、心配ありません。家の中は、自分の弱さや本音を吐き出せる場であっていいと思います。「いつも理想の父親であらねば!」「弱音は言えない」ではなく、「失敗しちゃった」「でも外では、しっかりしたお母さんだよ」と、まず親自身が思えることが大切です。

家で親がお互いに失敗や弱音を言える姿を見て子どもは安心し、成長するにつれてTPOを考えてふるまえるようになります。

時々、子どもが学校と家とでふるまいが違うため、「うそつきになってしまった」と心配するお母さんもいます。でも、それはちゃんと親を見て、本音と建前を使い分けられるようになっている、ということなので、褒めてあげてくださいね。

今は子育ての転換期

私たちの親世代は、「お前の意見は聞いてない」「そんなことしないで、こうしなさい」「そんなことしたら失敗するぞ」と言われ、黙って親や先生、上司の言うことを素直に聞くことが”お利口さん”と言われた時代に育ちました。

でも、今は子育てや教育の転換期です。指示されたとおりにできる子に育てる時代から、自分で考えて行動できる子に育てることが求められる時代になりました。

そのためには、まず親どうしが会話力を磨き、お互いを認め合いながら、自分で考えて行動する姿を子どもに見せていかなければなりません。

もちろん、はじめは大変なことも多いでしょう。でも、夫婦がお互いへの考えを変えることは、子どもへの考えも変えることであり、そこには、きっとたくさんの発見と喜びもあるはずです。

天野 ひかり フリーアナウンサー、NPO法人親子コミュニケーションラボ 代表理事

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あまの ひかり / Hikari Amano

上智大学文学部卒業。テレビ愛知アナウンサー(1989~1995)。現在はフリーアナウンサーとして活躍中。フリー転向後はNHKの番組を中心に出演し、2008年3月まで教育テレビの番組『すくすく子育て』でキャスターを務める。自身の結婚、出産、育児と仕事の両立を経験したことで、子育ての重要性を認識。「NPO法人親子コミュニケーションラボ」を立ち上げる。子どもの自己肯定感を育むための親子のコミュニケーション力をのばす講座や講演を全国の自治体や幼稚園、学校、企業などで開き、今までの受講者は5万人以上。多くの父母から支持され「育児が180度変わった!」など感動の声が寄せられている

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