世界遺産を身近にした「東海北陸道」の威力 距離も時間も短縮した「画期的」道路の功績

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それが東海北陸道の開通で、マイカーで急げば名古屋から富山まで3時間余りで行けるようになった。地域間の距離を縮めたという意味では、画期的な高速道路となったのである(なお、東海北陸道とほぼ並行する国道156号線には、かつて名古屋と金沢を結ぶ名金線と呼ばれる路線バスが運行されていた)。

この沿線は名古屋都市圏の人にとっては手近なスキーエリアであり、長い間暫定二車線であったため、冬季の週末はスキー客で渋滞が慢性化していることでも知られていたが、今年3月に高鷲IC~ひるがの高原SAの4車線化が完成したことにより、一宮JCTから飛騨清見ICまでの120㎞の4車線化が完了、すでにその大部分が完成していたこの冬の渋滞の大幅減少につながるなど、時間短縮効果がすでに表れている。

高速直結で一大観光名所に

この東海北陸道の開通で、観光地として一気に客足を伸ばしているのが合掌造りで知られる岐阜県の白川郷と富山県の五箇山である。

ともに、集落に隣接するようにして同じ名前のインターチェンジができ、まさに高速道路と直結されたことで、かつては隔絶された山村であったものの、それゆえに奇跡のような美しい集落が残されてきた2つの地域が一大観光名所になったのである。

今年6月下旬、名古屋に泊まった筆者は、名古屋駅に隣接する名鉄バスセンターを午前8時に出発する岐阜バスが運行する白川郷行きのバスに乗車した。バスセンターからは同時刻にやはり東海北陸道経由で高岡・氷見へ向かう加越能交通の高速バスも出発、名古屋都市高速から名神を経由して東海北陸道に入るまで、2台のバスはまるで同じチームで走るように前後に並んで走行するのを楽しむことができた。

東海北陸道は、下り線全線で56ものトンネルをくぐる山岳路線で、岐阜県に入りしばらくは長良川に寄り添うように走るが、白鳥ICを過ぎると一気に高原地帯へと標高を上げていく。

途中、高さ125mという日本一高い橋脚を持つ鷲見橋、全国の高速道路の最高地点(1085m)である松ノ木峠、そして日本土木史上屈指の難工事として知られる飛騨トンネル(長さ1万710m、道路トンネルとしては国内第3位)を通過するなど車窓風景も目まぐるしく変わる。24人とほぼ定員の半分を乗せたバスは、途中ぎふ大和PAでの10分の休憩を挟んで、2時間半で白川郷のバスターミナルに滑り込んだ。

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