アジアを旅する人に襲いかかる伝染病の魔の手 予防接種を受けておかないと危険な病気に

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デング熱の潜伏期は3~14日。日中の交流が盛んになっている昨今、潜伏期間の患者の移動を介して、日本にデング熱が恒常的に入ってくるだろう。

広東省で流行するのはデング熱だけでない。A型肝炎、狂犬病、腸チフス、デング熱と同じく熱帯感染症であるチクングニア熱も流行する。感染症の巣窟と言っていい。

世界で最も権威がある医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』は2016年7月21日号に『海外旅行者への医学的助言』という総説を掲載し、その中で海外旅行者の22~64%が旅先で何らかの病気を発症する。多くは下痢、呼吸器感染、皮疹などで自然に治癒するが、中には重症化する患者もいる。このうち多くのものは予防可能ながら、研究によって異なるが20~80%の旅行者は何も対策を立てていないと述べている。

近年は高齢者の海外渡航が増えている。持病を有する人もいるため、特段の配慮が必要だ。旅行医学の専門家に助言を仰ぐのがいいが、このあたりの危機感がわが国で共有されているとは言いがたい。

ぜひ、今夏に海外渡航を考えられている人は、渡航先の感染状況を調べて、不明な点があれば旅行医療の専門家に聞いてもらいたい。そして、必要とあればワクチンを打ってほしい。ワクチンで回避可能な病気で命を落としたり、長い間、入院してもらったりしたくない。

日本にいても感染症に対する危機意識は必要

危険なのは海外渡航だけではない。一部の人には、国内でも同様の問題が起こりうる。例えば日本脳炎だ。

日本脳炎は日本脳炎ウイルスが引き起こす感染症だ。多くの感染源はブタで、ウイルスを保有するブタを吸血した蚊に刺されることで感染する。

日本脳炎ウイルスの感染は、ほとんどが細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず、感染症状を発症していない「不顕性感染」で、脳炎を発症するのは感染者の0.1~1%とされている。ただ、いったん発症するとウイルスを抑える治療法はなく、対症療法を続けるしかない。致死率30%、回復しても大半が脳に障害を残す。

日本脳炎ウイルスは、人から人に感染することはないため、大流行を起こすことはないが、1960年代に日本では毎年1000人程度の患者が発生していた。患者が減ったのは1967年に予防接種が始まったためだ。

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