松井稼頭央の「天国と地獄」を支えた妻の献身 メジャーリーガーの妻としての壮絶な日々
「『美緒は楽しそうだから大丈夫』って思ってくれたら、自分だけのことを考えればよくなるじゃないですか。家族、夫婦だから寄り添うけど、寄りかかることはしないようにしようと。一緒に頑張っているけど、決して寄りかかることはしない」
美緒さんの思いは稼頭央にも伝わっていた。
「野球のことだけを考える環境を作ってくれました。美緒が言わないだけで、僕が知らない苦労がいっぱいあったと思います」
ニューヨークで思うような結果が残せなかった稼頭央は、2006年のシーズン途中、コロラド・ロッキーズへトレードに出される。背水の陣で挑んだ稼頭央は、愛する妻と娘のために奮起した。8月下旬にメジャーに昇格すると、32試合ながら打率は3割4分5厘をマークしてエラーは2つのみ。
翌年、稼頭央は復活を遂げる。セカンドのレギュラーを掴むと、スーパープレーでチームのピンチを何度も救った。ファンから愛され、温かい声援を背に活躍を重ねた。ニューヨークでブーイングを浴び続けた男は、チームプログラムの表紙に選ばれるほどの人気選手になっていた。
リーグ優勝が懸かった重要な試合でも、稼頭央は攻守で貢献。なんと、ロッキーズは球団初のリーグ制覇を果たしたのだ。
試合直後、グラウンドには妻と娘を抱き寄せる稼頭央の姿があった。
「今日、家族も来ていたので。少し良いところを見せられたんじゃないかな」
メジャー挑戦から4年。2年以上にも及ぶ「地獄」を乗り越えた夫婦に、ようやく笑顔が戻った。
夫婦の固い絆は変わることがない
2011年、日本球界に復帰した稼頭央は、東北楽天ゴールデンイーグルスで2017年までプレー。2018年、古巣のライオンズに15年ぶりに復帰し、同年現役を引退した。数々の功績を評価され、今年からはライオンズの2軍監督として後進の育成に当たっている。
現役ラストイヤーとなった2018年、稼頭央は美緒さんにこう告げた。
「美緒と乗り越えた部分を考えると、本当によく自分について来てくれて、感謝してもしきれない。僕にはもったいないくらい、いい奥さん。これからも色々あると思いますが、またよろしくお願いします」
25年間のうち、19年にわたって稼頭央の現役生活を支えた美緒さん。プロ野球選手の妻としての戦いはひと段落だが、夫婦の固い絆は変わることがない。これからもお互いの足でしっかり進んでいく。傍らの最愛の人を想いながら。
(構成=鷲崎文彦、中村翔)
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