非上場「ぺんてる」株主総会が注目される全事情 業界最大手コクヨが介入、再編含みの展開も
マーキュリアがぺんてるの筆頭株主になったのは、2018年1月。創業家出身の堀江圭馬氏から保有株を買い取ってからだ。マーキュリアは、今回なぜコクヨを引き込んだのか。マーキュリアのCIO(最高投資責任者)で、ぺんてるの社外取締役を兼ねる小山潔人氏は東洋経済の取材にこう話す。
「コクヨが持つ中国、インドでの販売網と連携することが、ぺんてるの将来の事業成長に資すると考えた」。例えば中国の文具市場規模は、2018年に約3600億円と、日本市場の約3.6倍。しかも年率約8%で成長している。コクヨはこの大市場に着々と販売網を築いている。欧米には強いぺんてるだが、今後の成長を考えるとアジア市場の強化は不可欠。そうした提携をコクヨと進めるために、投資組合を売却したというわけだ。
ただ、現在でも両社の間で提携の話はまったく進んでいない。ぺんてるは東洋経済の取材に対し「コクヨとアライアンスに関する協議は行っていない」と断言する。
業界2位のプラスとの提携話
ぺんてるの売上高は409億円(2017年度)。コクヨのそれは3151億円(2018年度)とケタ違いで、ぺんてる経営陣には飲み込まれるという危機感があるのかもしれない。さらに、ぺんてるが反発するのはもう1つ理由がある。独自にパートナー探しを進めていたのだ。そのパートナーは、文具業界2位のプラス社。コクヨをライバルとする大手の一角だ。
プラスとの構想は、合弁会社を設立し、国内販売を強化するというもの。そのために元取締役の1人をプラス社に常駐させ、3月にはプラスとの業務提携を推進するための部署まで新設していた。
しかし、この構想にマーキュリアが疑問を呈する。「プラスとの事業提携の中身は、(人件費など)固定費が増えるため売上高を大幅に増やさないとペイしない計画だった」(マーキュリア)。しかも、合弁の株式のマジョリティーはプラスが持つ。市場縮小に直面する中で、ぺんてるの国内事業がさらに難しい局面になる可能性があった。
ぺんてるとマーキュリアの不協和音が如実にあらわれたのは、今年1月15日のぺんてる経営会議だった。たまたまマーキュリア小山氏が不在にした席で、ぺんてるはプラスからのデューデリジェンス(投資やM&Aを実施する前に行う資産査定)を受け入れることを決定したのだ。プラスありきではなく、柔軟にパートナー探しを進めたほうがいいと進言してきた小山氏からすれば、裏切られた格好だった。
そして4月、プラスはマーキュリアに保有株すべてを買い取りたいと打診する。同じ頃、水面下ではマーキュリアの保有株をいったんはプラスが引き受け、その後で複数社に分散させる構想も進行していた。A社が20%、B社が10%、C社が7%……といった具合で、実はここにはコクヨも入っていた。コクヨはこのとき、短期間だがぺんてるにデューデリを実施している。
それぞれの思惑が交錯する中、マーキュリアはコクヨへの売却という決断に踏み切る。しかも、投資組合の組合員持ち分の売却というスキームで、そのことをぺんてるに通知したのは発表の直前だった。ぺんてる経営陣が激怒するのは、こうした背景がある。
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