名門モンブラン、「8万円電子ペン」を売る理由 リアルの「紙」と「ペン」を超える日は来るのか
上質な革製の手帳に専用の電子ペンで文字を書き込むと、ほぼ同時にデジタル化されてスマホ上に現れる。書いた文字は、あとからスマホやタブレット上でテキスト化したり、他言語への翻訳や検索をかけたりすることもできる――。
このユニークな商品は、高級万年筆で知られるドイツの老舗文房具ブランド、モンブランが2016年から展開しているもの。価格は税込みで9万円近くと高価だが、同社ニューテクノロジー部門の責任者、フェリックス・オブスコンカ氏によれば、「ブランドのファンを中心に好評だ」という。さらに「当社のようなアナログ文具メーカーがデジタル化に対応することで、手書きの価値を訴求することに意味がある」と、今回デジタル文房具に参入した背景を語る。
クリエイター向け電子ペンを牽引するワコム
モンブランの電子ペンをOEM(相手先ブランドによる受託生産)で供給しているのは、日本の電機メーカー、ワコムだ。ワコムは、イラストレーターや漫画家などクリエイター向け電子ペンとタブレット(ペンタブレット)で世界シェア88%(同社調べ、2015年時点)を誇っており、その業界では老舗のメーカーとして知られる。米ウォルトディズニー社が1990年に初めてデジタルで製作した映画「美女と野獣」。その製作にワコム社の製品を採用したほど、性能には定評がある。
現在もワコム社の売上高の半分以上はプロ向けの製品だが、ここ5年ほどは、一般の人が使う電子ペン関連の業績の伸びが顕著だ。モンブランに加えて、同じドイツの老舗筆記具メーカーであるステッドラーも、同社のペン先を搭載した電子ペンを投入。サムスン電子、デル、レノボ、ファーウェイなどの電機・ITメーカーからも、PCやタブレットに付属する電子ペンの採用が相次ぐ。日本では昨年10月、3年ぶりに新モデルが発売されたサムスンのスマートフォン、「ギャラクシーノート」シリーズに付属する電子ペンも実はワコム製だ。
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