プーチンの北極圏開発に日本が参加する意義 中国の北極への野望をめぐる微妙な駆け引き
このアークティック2に日本が資本参加する交渉が今、大詰めを迎えている。おそらく大阪で開催されるG20に合わせた日ロ首脳会談で三井物産がJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)の支援を受けて権益10%を獲得することが発表されるだろう。
日本にとっては、そして三井物産にとっても、サハリン2プロジェクト以来の本格的なロシアのエネルギープロジェクトへの参入となる。サハリン2と同じく三菱商事も参入する可能性がある。もしも妥結すれば、日本が北極海の資源開発に初めて参入し、北極海航路をめぐる地政学にプレーヤーとして参加することになる。
そもそもなぜ日本がこのプーチンプロジェクトに参加することになったのか。そして日ロ双方の思惑は何か。
野望むき出し、先行する中国
今、北極圏で存在感を強めているのが中国である。中国は北極海の沿岸国ではないが、一帯一路の一環として氷上のシルクロードの構築を目指し、「隣接する国」として積極的に北極海航路の実現に参加するとしている。その1つが北極海の資源開発、特にヤマルへの積極的な姿勢である。
すでに第1期のヤマルLNGプロジェクトにCNPC(中国石油集団)が20パーセント、シルクロード基金が9.9%の権益を獲得した。第1期は日本の日揮、千代田化工がフランスのTecnipとともにLNG工場の建設を請け負い、実体としてはプラント建設に実績のある日本の力が示されたプロジェクトなのに、資本の面では中国に先行された形となっている。
さらに今年4月26日、北京から衝撃的なニュースが東京に飛び込んだ。中国のCNOOC(中国海洋石油集団)とCNPCがアークティック2の権益をそれぞれ10%、中国としては20%獲得する契約をノバテクとの間で締結したのだ。一帯一路の国際会議で中ロ首脳会談が行われ、プーチン、習近平両首脳を前に大型契約が締結された。北極圏のLNG開発での中国の存在感がますます大きくなることを示す。
中国と並ぶ存在感を見せているのはヨーロッパのフランスだ。フランスの大手メジャー・ㇳタール(TOTAL)がノバテク本体の株式16%を所有するとともに、ヤマルLNGプロジェクトの20%、アークティック2プロジェクトの10%の権益を獲得している。フランスと中国がヨーロッパとアジアの主要なパートナーとなっている。そこに日本がアークティック2の10%の権益を獲得してようやく参画することになる。
日本がロシア北極圏のLNG権益を確保するのは、第1にエネルギー安全保障の観点からである。
これまでLNGの市場には、ロシア、アメリカという主要な天然ガス生産国が参加してこなかった。しかし世界のLNG需要が増える中で、アメリカがシェールガス革命でガスの輸出国となり、ロシアもパイプラインからLNGに生産をシフトする。米ロにカタールなど中東が主要なLNG生産国となる時代を迎える。
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