こうして生みの苦しみを経て誕生した新型スープラの走りはどうか。2018年12月に参加したプロトタイプ試乗会は寒さ厳しい雨のサーキットで行われたが、公道試乗会は九十九折りで有名な初夏の伊豆。まずはフラッグシップである「RZ」(690万円)からステアリングを握った。
直列6気筒直噴3.0LDOHCターボエンジンは340PSのハイパワーもさることながら、51.0kgf・mの強大トルクを回転域によらず自在に操れることに驚く。最大トルクはわずか1600回転から発揮し4500回転までその値を維持。
もっとも、これはターボチャージャーがフル過給をしている状態でのカタログ値ながら、伊豆の山道を上限50km/h程度でゆるりとながしていても、カーブを終えアクセルペダルをジンワリ踏み込んだ際には豊かなトルクがすぐさま体感できるから気持ちがいい。なお、新型スープラの開発ステージは約90%が公道で、日本では山道だけでなく渋滞の激しい都市部での評価も行われている。
ゆとりをもたせた設計
RZが搭載する3.0Lターボエンジンの最高出力は5000回転で発揮。ピュアスポーツを語るにはずいぶんと低い回転数だ。これについて多田氏に伺うと、「将来的に例えば、国と地域によって最高出力の値が課税対象になることが考えられます。新型のエンジンはいずれも最高出力を発生する回転数が低いものの(SZは4500回転)、実際にはさらに上の回転域までほぼその数値を維持しています」という。
実際、タコメーター上も6500回転までは常用回転域としているし、以前試乗したテストコースでは6000回転を越えてもパワーの落ち込みはほとんど感じられなかった。
ガソリンエンジンといえども厳しさを増す排出ガス規制の波には抗えず、それがハイパワーエンジンであればなおのこと。自動車メーカーとしても短時間での対処はむずかしい……。「お客様にとってみても年次改良が加えられた際にカタログ数値が下がったらガッカリされるでしょうから、そうした事態を迎えないようゆとりをもたせた設計としています」(多田氏)。
続いて試乗した中間グレードの「SZ-R」(590万円)とベースグレードの「SZ」(490万円)には直列4気筒直噴2.0LDOHCターボエンジンが搭載される。ただし、SZ-R(258PS/40.8kgf・m)とSZ(197PS/32.7kgf・m)では出力特性に違いが設けられた。トランスミッションはRZを含めトルクコンバーター方式の8速AT。全グレードとも最終減速比まで含めたギア比は同じだ。
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