トヨタ「スープラ」公道で乗ってわかった実力 17年ぶりの復活で、気になる乗り心地は?

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多田氏の求めたピュアスポーツカーの走りを味わうにはスープラ伝統の直6エンジンを搭載するRZ一択となるのだろうが、速度域の低い日本の公道で常にピュアスポーツカーを味わいたいのであれば筆者はSZ-Rをおすすめしたい。足回りの特性、ボディの動き、アクティブディファレンシャルの働きがより自然で荒れた路面でも、車速が遅くても走りが存分に楽しめるからだ。

同じ2.0Lエンジンながら61PS/8.1kgf・mの差がつけられたSZは上位2グレードと比較するとエンジンパワーに線の細さを感じるものの、クルマ全体の動きはむしろ自然。また、比較すればやや細めの17インチタイヤを装着していることからステアリングへのキックバックも少なくとっつきやすい。

公道での総合評価は70点

ただ、日本の公道においては標準装着となるランフラットタイヤとの相性が悪いようで、路面の凹凸が大きくなると細かな上下動が増えてくる。「SZは自分仕様にカスタマイズしていただくためのベースグレードとしても考えています」(スープラを担当するエンジニア)とのことなので、タイヤやサスペンションキットのパーツ交換を前提とするならSZもありだ。シフトレバー付近に設けられたドライビングモードスイッチは、「ノーマル」と「スポーツ」の2モードを基本に、個別に設定を行う「インディヴィデュアル」モードがある。

ノーマルモードが基本的なスペックであるのに対してスポーツモードでは、エンジン出力特性/トランスミッション変速特性/ステアリングの操舵フィールがスポーツ走行に適したモードに切り替わる。さらにSZ-RとRZのスポーツモードではサスペンションの減衰力特性が高まり、電子制御方式のアクティブディファレンシャルの設定がコーナリング速度重視に切り替わる。各グレード共通骨格の減衰特性に優れたシートは秀逸だ。視線の上下動が抑えられサイドサポート性も高い。

新型スープラと筆者(筆者撮影)

筆者が感じた新型スープラのピュアスポーツカー度は90点以上! しかし、実用性が求められる公道での総合評価は70点。見切りの悪いボディは(当然ながら)離合含めて苦労するし、ドアミラースイッチは見た目に質素で操作フィールも良くない。また、手動調整式のシートレバーのうち背もたれ側の調整レバーは筆者のドライビングポジション(身長170㎝)だとシートベルトと重なって操作しづらい。

とはいえ、スポーツカーの神髄は走行性能に尽きる、という意見もある。確かにそうだ。筆者の愛車であるND型ロードスターもオープンスポーツカーとして見れば楽しさが先にくるため個人的には満点をあげたいが、実用性となるとガクンと落ちて我慢を強いられることもしばしば……。もっともそこを理解して乗り続けることもスポーツカーを所有する悦びだ。

6月6日時点の最新情報では、すぐに注文を入れても納車は2020年1月以降になるという。その頃には、開発が進んでいると噂の6速MTの導入話が見えてくるだろうか……。いずれにしろ、クルマ好きの一人としてスープラが戻ってきたことはとてもうれしい、そう感じられた実のある公道試乗であった。

西村 直人 交通コメンテーター

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にしむら なおと / Naoto Nishimura

1972年1月東京都生まれ。WRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)理事。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会 東京二輪車安全運転推進委員会 指導員。(協)日本イラストレーション協会(JILLA)監事。★Facebook「交通コメンテーター西村直人の日々

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