原油価格が思ったよりも意外に上昇しないワケ ホルムズ海峡周辺タンカー攻撃の「謎」

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一方、アメリカのパトリック・シャナハン国防長官代行は「機密を解除して情報をできる限り公開していく」とし、攻撃に使われた爆弾の種類や製造元の情報を挙げている。また、アメリカ軍は精鋭部隊のイラン革命防衛隊が攻撃後にタンカーに近づき、不発の機雷を除去したとする映像を公開した。

さらに、14日にはアメリカ軍当局者が攻撃を受けたタンカー周辺を飛行していたアメリカの無人偵察機に対し、イランが地対空ミサイルを発射し、情報収集の妨害を行ったとしている。

米英 vs イラン・中国・ロシアの構図に?

イランのハサン・ロウハニ大統領は14日の上海協力機構の首脳会議で、「アメリカは中国やイランへ圧力をかけることによって世界を支配しようとしている」とし、ロシアも「事件について誰かを非難してはならない」とする声明を出している。

核合意の枠組みにとどまる中ロはイランへの支援を明確にしており、対立の構図が「米英対中ロ」にまで拡大する可能性も指摘されている。一方、核合意にとどまるほかの欧州各国は、攻撃に関して中立的な立場を保っている。

ドイツのハイコ・マース外相は、アメリカ軍がイラン関与の証拠とした映像について「結論を出すには証拠が十分ではない」とし、フランスも慎重な姿勢である。しかし、7月にはイランが核関連の活動を加速させるかを判断する、としている。核開発をちらつかせて外交交渉を優位に進める「瀬戸際戦術」との見方もあり、アメリカの警戒が強まるとみられている。

一方、攻撃があった13日の前日に、安倍首相はロウハニ大統領と会談し、周辺諸国への影響力が強いイランが中東の安定に貢献するよう要請し、イラン核合意を支持する日本の立場を伝えた。ロウハニ大統領は「戦争は望んでいない」とし、「地域の緊張の原因はアメリカの経済戦争にある。経済戦争が終われば安定確保が実現される」と主張した。

また、両首脳はイラン核合意を維持する重要性で一致し、安倍首相は「イランが引き続き核合意を順守することを期待する」としている。13日のハメネイ師との会談で安倍首相は、先に会談したトランプ大統領から「事態のエスカレートは望んでいない」との発言があったことを伝達した。

これに対し、ハメネイ師は「核兵器を製造も保有も使用もしない。その意図はない」とし、核合意を維持する従来の考えを改めて表明した。その一方で、アメリカとの対話を否定している。

ドナルド・トランプ大統領は、安倍首相のイラン訪問に謝意を表明する一方、「イランとの合意は時期尚早だ。彼らは準備ができていない」と突き放し、ポンペオ国務長官も「ハメネイ師はトランプ大統領に返事はしないとし、安倍首相の外交を拒否した」とイランを非難。さらに「イラン政府は日本のタンカーを攻撃し、日本を侮辱した」と主張している。

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