藤野 いろいろ話を聞くと、自民党の一部では、安倍首相が靖国に参拝することに対して反対していたということですね。中国や韓国との関係改善についても、水面下では、さまざまな努力が行われていたらしいのですが、それも台無しになった。恐らく安倍さん自身も、靖国参拝をして国際的に波風が立つのは、経済的に損であるとわかっていたようなんです。ただ、安倍さんの価値観として、経済的な損得以上に、日本人としての「美醜」に関係してくる問題なのでしょうね、靖国参拝は。人間というものは、美醜、損得、正義・不正義、快・不快によって行動するかどうかを決めるものですが、安倍首相の場合は、とにかく損得よりも美醜が勝ったということだと思います。
アベノミクスは正念場に
渋澤 いろいろなことを考えると、今年は、やはりアベノミクスの正念場と考えるべきだと思います。昨年は、ハネムーンピリオドのように大勢の人がアベノミクスを歓迎してくれました。一本目の矢の金融政策は明らかなサプライズ効果があったけど、今年の場合は、やる事が当たり前になっているので、ポジティブなサプライズにはなりにくいですね。今年はいよいよ、具体的な成長戦略を見せていかなければならない1年です。だからこそ、なお一層のこと経済に取り組んでいかなければならないのになぁ~。
藤野 ちょっと危険だなと思うのは、言語解釈の問題。一部の政治家が、「米国はdisappointedと言っているけれども、これはちょっと気になるという程度のことで、大したことではない」と言っていましたよね。でも、決してそんなことはないでしょう。
渋澤 そうそう。だって、disappointedの前に「very」が付いているのかもしれないからね。先日、ワシントンから来日した知人から聞いた話だと、ワシントンの政府や外交戦略専門家はあらゆる場面で、靖国参拝を控えた方が良いというメッセージを日本政府に送っていたらしいですから、米国の反応が想定外とは絶対に言えないはずです。
オバマ大統領の立場も政局的に盤石とは言えない状態ですから、東アジアの問題に引き込まれることは歓迎していないはずです。今、北朝鮮の動きが不穏になっているところ、日中韓の3国がいがみ合っている状況というのは、どう考えても望ましいことではありません。実際、個人のレベルでは政府役人の韓国人たちから「私たちはもっと未来志向を持つべきだ」という声をもらっていたし、中国から日本に来る観光客の数も徐々に増え始めていた。そういうタイミングだっただけに、とても残念だね。
中野 そうなんですよ。2014年はグローバルな地政学リスクが日本に向かっているような気がしてならないのです。中国や北朝鮮を巡る東アジア問題は、中東よりも大きなリスクファクターになるのではないかと思います。特に北朝鮮の内部統制がいつ破綻をきたすのか、気になります。また中国も、今年は正念場を迎えるのではないでしょうか。
渋澤 でも、中国は経済規模も大きいし、経済自体は資本主義を採り入れているから、その意味で、北朝鮮と同列に論じることはできないんじゃないかな~。
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