日本人男性とのミスマッチ問題である。僕の主要関心事なので後ほど詳述する。
井上さんの専門はインフラやエネルギーで、大学院時代は海外の国際援助機関で短期間働いていた経歴もある。研究者になるつもりはなく、同期の多くが向かう戦略系コンサルティング会社に入るのはつまらない。開発援助機関への就職を検討していたときに、すでに社会人になっていた友人から誘われたのが、現在の外資系IT企業だった。
「話を聞いているうちに悪くないかな、と思いました。ITもインフラになりつつある時代なので、知っておいて損はないし。何か違うと感じたら辞めることもできるくらいの気持ちで入社しました」
ソファで寝転がって仕事してもいい自由な社風の世界的に知られる会社で、井上さんは伸び伸びと働いている。
「生意気だと思われてもおかしくない私を、受け入れてもらえました。グローバルな環境なので変な上下関係はなく、言いたいことは言わせてもらえます。よほど緊急じゃなければ、上司より先に帰ることもできる。自己主張すべきときはしています」
井上さんは仕事で何を目指しているのだろうか。高給ではないとしたら、相変わらず「トップ」が目標なのか。
私が活躍して日本人の海外でのポジションをあげたい
「私が国際的に活躍することで、日本および日本人の海外でのポジションを上げることができればいいなと思っています。取り組む分野は何でもいい。今はITインフラの整備への思いは強いのですが、いずれは開発援助の世界に戻るかもしれません。日本人は持っているものをアピールする能力に欠けていると思います。日本人は優秀だしすごいね!という評判を作りたいんです」
海外経験のあるエリートによく見られる積極的な愛国心だ。井上さんの「負けず嫌い」はついに全世界を相手にするレベルへと昇華された。
一方で、「ダンナさんの海外転勤についていくのが夢」「生計を立てる役割は任せたい」と井上さんは激白する。日本人のポジションを上げる目標と完全に矛盾しているではないか。
「専業主婦の母から受け継いだ『なんちゃってお嬢の血』だと思います。どの土地でも何かしら面白いことを見つけて、仕事でもボランティアでも楽しめる自信があるのかもしれません。仕事も頑張ってきた父は、私にも同じ姿勢を求めていると思いますが、母からは『女の子なのにそんなに遅くまで仕事しなくちゃいけないの? すごいね~』と半ばあきれられています。両親に共通している意見は、『あなたにはお見合い相手を見つけられない。自分で探してね』(笑)。父は母を大事にしていて、母は父を尊敬しています。すごくいい夫婦関係です。私も父ぐらい甲斐性がある男性を見つけたいです」
井上さんには日本国内で日本人男性と交際した経験はほとんどない。アプローチされることが少なく、されたとしても井上さんが求めるタイプではないのだ。
「私を引っぱってくれる人が好きなのです。でも、私のところに来てくれるのは、最初から私に頼りたいような人ばかり。彼氏でもない段階でなぜ頼る!と面倒くさくなります。需要がマッチしないのです。私の周りで総合職としてバリバリ働いている女性で、普通にかわいくてコミュニケーションもできる人たちも、同じことを言っています。『私たち、ターゲット層を間違えてる? マーケティングが下手だよね』と」
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